株式会社 Jコスト研究所

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J-Cost Research Center

連載コラム『Jコスト改革の考え方』目次

JBpress連載コラム『本流トヨタ方式』

ビジネス情報サイトJBpressにおいて、2008年から2013年までの間に合計104回のコラム 『本流トヨタ方式』 を連載していました。

現在連載中のコラム 『Jコスト改革の考え方』と併せて読んで頂くと、より深くJコストの考え方がご理解頂けるかと思います。是非、下記のリンクにアクセスしてみて下さい。

JBpress連載コラム『本流トヨタ方式』

過去の所信表明





2022年10月

季節のご挨拶

〜 仮説;クリミア橋爆破はプーチンの『苦肉の計』 〜

読者の皆様に謹んで10月のご挨拶を申し上げます.

しばらくお休みを頂いていましたが,先回(5月)この欄で以下の四項目が,年末までに日本を襲うことが予想されるので改革を急がねばならない…と書きました.

  • 【A】コロナ禍による生活環境の変容(売れ筋が変わる)
  • 【B】急激な経済回復に伴うインフレ懸念と,それに伴う金利上昇,円安
  • 【C】ウクライナ侵攻による食料とエネルギー危機
  • 【D】中国のゼロコロナ政策で,地球規模のSupply Chain毀損,中国の景気後退で不動産バブル崩壊⇒地球規模の大不況

5ヶ月経った今日,上記の四項目は,恐れていた最悪の方向に推移しています.中国は5年に一度の共産党大会を前にして緊張状態にありますが,経済はかなり悪化している様子で,不動産バブル崩壊は現実味を増してきたといいます.

この辺の話は次回に回すとして,今日皆さまにご呈示するお話しは,表題のように,皆さまと同じマスコミ報道を手にしながら,幾ばくかの工学的知見と,トヨタ生産方式のツールとして有名な『何故なぜ分析』を使って真因の探究をしていくと,マスコミ報道の主流のウクライナ犯行説とは真反対の仮説『〜 仮説;クリミア橋爆破はプーチンの苦肉の計〜』が導き出される事についてお話ししたいと思います.

ウクライナ侵攻を憂いている皆さまは勿論のこと,戦争に関心の無い方でも,この仮説を導き出したプロセスは,現場で起きた事象の真因の探求にも役立ちますので丁寧に文章にまとめました.

きっとお役に立つと思いますので 最後までお読みください.


[1] 報道機関の取り扱い

10月7日はプーチンの70歳の誕生日だったので,その一日遅れで『クリミア大橋の襲撃』という大変なプレゼント渡された…報道されて,それ以降,誰かは分からないけれど,反ロシア系の犯行という論調で推移しています.

10日からのロシアによるウクライナ全土に向けての,主に電力インフラを狙った大量のミサイル攻撃に対して『ロシアの反撃』というサブタイトルで報道されています.

一部のコメンテーターが,爆破の48時間後に一斉にミサイル攻撃をするのは準備が良すぎる.米軍でさえ手続きに72時間かかる…橋爆破とは関係なしに,事前に準備されたもと思われる…という説明もありました.

今日まで,橋を爆破されてプーチンは怒り心頭に達している…,次々と反撃を繰り出すであろう…という論調に収斂しつつあります.


[2] 三国志由来の『苦肉の計』とプーチンの前科

苦肉の計

兵法三十六計の第三十四計にあたる戦術.

人間というものは自分を傷つけることはない,と思い込む心理を利用して敵を騙す計略である.日本では苦肉の策(くにくのさく),苦肉の計(くにくのけい),苦肉の謀(くにくのはかりごと)ともいう.

(Wikipedia)

歴史を紐解けば三国志が起源とされますが,近代では
1937年;盧溝橋事件から日中戦争が始まり
1964年;トンキン湾事件で米軍の北ベトナム爆撃が始まりました.

ロシアでは,
1999年;エリツィン大統領が汚職事件で起訴されかけた時,当時の首相だったプーチンがKGBに命じ高層アパートを次々と5回爆破させ,
この甚大な被害をもたらしたのは,『チェチェンのテロによるものだ』として国論を統一し第二次チェチェン紛争起こし,チェチェンを支配下に置くと同時に,エリツィン大統領を苦境から救い出すことに成功したとされ,その功績で,プーチンが大統領になった…のが公然の秘密とされています.


以下の文章で,1999年の成功体験から,今回のクリミア大橋は,プーチンの苦肉計(自作自演)という仮説が導き出せます.


[3] クリミア大橋爆破に『何故なぜ分析』を試みる

以下, 報道から拾い集めた大括りの事実を【エビデンス】とし,個々の事象から導いた結論を<考察>として,工学的知見と,トヨタ生産方式の『何故なぜ分析』手法を使って紐解いていきます.

【エビデンス-1】

クリミア半島の空軍基地の爆発の時は,現場写真は遠方からの煙だけ写ったモノでした.ロシアは『事故だ』と言い張っていましたが,西側報道は,衛星写真から被害が解明し,ニュースにしていました.

一方,今回のクリミア大橋の件は素敵なアングルで動画が撮られ,ネットで即時公開されています.事前に計算したアングルで撮影準備し,撮影後の仕上がりを確認して配信…疑われるほど迫力ある映像が配信され,ロシア側が積極的に関与した,としか考えられません.

【エビデンス-2】

下の写真のように爆破されたのは道路橋だけでなく,となりの鉄道橋を走っていた貨物列車にも爆破の影響で引火し炎上すると言う被害に遭った…,と言う状況を映し出した写真として各局で放映されています.

それではこの写真を詳細に検討してみましょう.



<考察-1>

走っていたとされる貨物列車が映像では停車状態で炎上します.

一般に貨物列車は急停止が不得手で,日本の法律では制動距離は600m以下と規制されています.大型貨車でも1車両20m以下ですから,急ブレーキをかけたとしてもその瞬間から停止まで25両分くらいは移動してしまうはずで工学的に説明がつきません.

さらに,運転士の立場で考えると,走行中に後方で大音響がしても『何が起きたのか?』『 何をすべきか?』咄嗟の判断はできないはずです.

通常は,おかしいと思ったら緊急停止する事になっていると思いますが,列車の特性として,橋の上やトンネル内で停車すると二次災害が起きやすく,又,復旧工事が厄介なので,平地までは強引に走行した後停止して点検するのが普通です.

特に鉄橋は高熱に弱いので,燃えている貨車を動かし続けて,鉄橋を熱被害から守るマニュアルがあると思います.

従って,走行中に火災に遭ったときは,発火地点からかなり離れた場所に貨車は停止しているはずです.

<考察-2>

停止している理由として,走行中の貨物列車が,爆発に遭遇した結果,衝撃で脱線して急停止した事が考えられますが,この場合は,脱線した貨車の後続の貨車は追突状態になり,折り重なった状態に脱線します.鉄橋から落下もあり得ます.<福知山線事故参照>

ところが,写真では全部の貨車は整然と並んで停車しています.脱線した様子はありません.


結論として,走行中の貨物列車が爆破で脱線もせずその場で即停止するということはありえません.

この写真が実写であるとすれば,貨物列車を停めておいてそので道路橋を爆発させたことになり,ロシア当局が関与せずにできるはずがありません.

まさにプーチン得意の『苦肉の計』つまり,自慢にしていたクリミア橋をプーチン自らが壊すとは誰も考えないので,敢えてそれを実行し,ウクライナの犯行と思い込ませ国論を統一して攻め込む……仮説が成立するのです.

【エビデンス-3】

クリミア大橋爆破がロシア側の苦肉の計(自作自演)とすれば,写真から得られる疑問点がすべて合理的な説明かできます.

<考察-3>

燃えているタンク車の間に,3〜5両の燃えていない貨車があります.

『鉄橋に傷を残さず派手に燃えさかる貨車を演出せよ』と命じられたら,工学技術者は以下のような計画をすることでしょう.

派手な煙を出すが高温にならない油を仕掛けた燃やすタンク車と,その前後に冷却材(水等)を積んだ冷やすタンク車,消化剤を積んだ消すタンク車を巧に配置し,燃やしながらゆっくり移動させ,冷やすタンク車から水を噴霧して鉄橋を冷やし,消化剤で火勢をControlすれば,派手な炎の割には被害は最少で済みます.駐車場の鉄骨のように,鉄橋の内側に事前に耐熱材を吹き付けておけば,準備は完璧でしょう.

<考察-4>

更に燃えている貨車の風下には石炭用の貨車があります.風上側にはタンク車が並んでいます.最小限の被害で貨車の燃えている写真を撮ろうと思えば,長い貨物列車の中で此処しかない場所が燃えています.

<考察-5>

爆破写真撮影後の鉄道橋の復旧はどうだったのでしょうか?事件発生は10月8日午前6時7分とされていますが,『列車は予定通り,現地時間8日17時10分にクリミア半島のシンフェロポリを出発した.』と報道されています.

鉄道はたった10時間で平常運転に戻っている事になります.

鉄橋の弱点である高熱被害は皆無だった.脱線もなかった.後始末をし,安全確認した後,定常運行に戻った,と解釈できます.

【エビデンス-4】

道路橋はどうだったのか…

<考察-6>

走行する自動車の運転手にとっては,道路橋を延々10km余走り,いよいよクリミアと言うところで橋桁が落下した事になります.

欧米の橋げた落下事故のニュースでは,ブレーキが間に合わず自動車が川に墜落した映像がよく放映されています.

今回は 爆発したトラックについてのみ報道がありますが,後続車については不思議と何の報道もありません.爆発の瞬間の写真には,行く方向に2台,来る方向に2台映っている事から,走行中車両の平均車間距離100mと仮定すれば,事故の起きたクリミア行きは入口から15kmとして橋の上を走行していた車だけでおおよそ150台の車両が事故現場付近に渋滞するはずです.

事故後30分で道路橋の入口を封鎖しても,橋の上には数百台,数kmの渋滞車両が,事故現場近くに並ぶはずで,しっかりした中央分離帯があるので,Uターンもできず,絶好の報道のネタになるはずですが,不思議なことに,そのような映像もアナウンスもありませんでした.

当局が事故を仕込んだのであれば,事前に通行量を絞る事も可能で,納得できます.

<考察-7>

橋桁は容易に交換できます.

ご承知のように,橋は『橋桁』と『橋脚』からできています.

『橋桁』は消耗品で,自動車で言ったらタイヤのように,不具合の生じた橋桁は交換されます.

全長何kmもある橋でも,現地工事は『橋脚』だけで,『橋桁』は数種類で済むように最初から設計されていて,近くの陸上の工場で効率よく大量生産され,でき上がった『橋桁』は大きなクレーン船で『橋脚』の間に設置されていきます.これだけの大きな橋であれば,予備の『橋桁』は準備されていると思われます.

従って,当面,一車線通行で凌ぎ,ウクライナが酷いことをしたと国民に印象付けた後,数週間で新しい『橋桁』を取り付け完全復旧すると思います.

現に,ニュースに依れば,当日夜から, 一車線通行で再開したと報じられています.

【エビデンス-5】

爆破事件後のプーチンの行動

クリミアの空軍基地の件では,ロシア当局は事故と言い張り襲撃されたと白状するまで数週間かかりました.プーチンは何も言っていなかったと記憶しています.

<考察-8>

クリミア大橋の件は,道路橋の爆発の瞬間映像,燃えさかる貨物列車の映像を当局が事前準備しなければ撮れないような素晴らしいアングルで撮影し,大々的に全世界に公開しました.

『捜査結果をプーチンに報告するシーン』まで撮影し放送しています.その後『プーチン自ら,これはウクライナのテロであると明言し必ず報復するというまでのシーン』を撮影させ,全世界に発信しています.

通常の常識では,誰もがウクライナが狙っていると思われる大橋に,見事に攻撃されたら,国家治安体制の大恥で,まず責任者の処分が話題になり,被害状況を世間に大々的に報道するものではありません.

プーチンの『苦肉の計』であれば納得できます.

<考察-9>

下記写真のように破壊された橋と燃え盛る貨物列車を背景にしてプーチン自ら壇上に立ち『ウクライナのテロに対して断固として闘う!』と言う大演説が配信されました.



そして皮肉なことに,プーチンの演説の背景の画面こそ,プーチンが欲しがった映像と思いますが,実写であるとすれば,工学的に見て停止している貨物列車ので道路橋を爆破させたという,ロシア当局の関与の証拠写真そのものなのです.

プーチンは,自分が命じて撮影させた映像の前に立って,ウクライナへの反撃の檄を飛ばしているのです.もしこの写真のタイトルを付けるとすれば『プーチンの苦肉の計』が相応しいと言わざるを得ません.

<考察-10>

事件発生から48時間以内でウクライナ全土に無差別攻撃を開始!

この攻撃の真の目的は,専門家によると,全土の電力施設を狙い撃ちし,冬に向かってウクライナ国民を凍えさせると同時に,ウクライナからNATO諸国へ電力輸出を止めさせ,ガスだけでは不足しているエネルギー供給制限の仕上げをしようというものだとされています.

クリミア橋の爆破劇は,この攻撃を報復と名付け,正当化を計る為でもあったのです.


[4] 『何故なぜ分析』のまとめ

ウクライナ戦争の話から 現場改善の話に移りましょう.

『何故なぜ分析』は思考実験の一種で,現地現物を細かく観察し,その原因は何であるか仮説を立てます.その仮説で説明できない事象が一つでもあれば,その仮説は正しくないのです.『何故なぜ分析』を途中でやめてしまうと,とんでもない結論に達してしまいます.

『本流トヨタ方式』では,『神は細部に宿る』という言葉でこれを戒めています.心構えだけではダメで,日常のトレーニングが大切になります.

ニュースを聞くときも,起きた現象とその原因を報道されますが,起きた現象はそのまま鵜呑みにするしかありませんが,原因はぜひご自分の頭で考えるトレーニングをしてください.

以前に「『大学』と『大学校』の違いはなにか?」という話をしました.『大学校』というのはある教材を効率よくマスターさせるための学校である,『大学』は無から有を生み出す研究機関で,五里霧中の中から正しい答えを導き出す方法論を学ぶところであると,その中身をマスターした方は理解していただいていると思います.

誰もが起きている事象の原因は自分の頭で考えることが民主主義国家では求められていますが,特に国家の税金を使って,大学で学位を取得した人たちは,矜持として,起きている現象は鵜呑みにせざるを得ませんが,その原因の推測は自らの頭で考え出さねばならないのです.そしてその考えを社会に広め,互いにディスカッションすることで一歩一歩社会を向上させていくことになるのです.

コロナ禍で顕在化してきた1990年代からの日本の衰退はこの矜持が衰えてきたことにあると警鐘を鳴らしてきましたが,クリミア大橋事件の報道が,プーチンの苦肉の計にハマっている事を見ますと世界中にその傾向があり,民主国家の基盤が緩んでいることを気付かされた次第です.


次回は,1ドル150円時代に,製造業は何をすべきかを考えてみたいと思います.


2022年10月吉日
(株)Jコスト研究所 代表 田中正知



2022年5月

季節のご挨拶

者の皆さまに謹んで5月のご挨拶を申し上げます.

新入学生の諸君は,先月の『大学と大学校の違い』の真意を理解して,自分の個性に磨きを掛け,未知を既知にするノウハウを身につけて,Only Oneの自分を作り上げ,社会に出てのご活躍を祈っております.

新入社員の 皆様には『5月病』のお話しをさせてください.

今までの大学生活までは,学生が授業料という代金を払う客で,教授陣はその代金で雇われている人達でした.学生には支払った授業料に見合うサービスを受ける権利がありました.

ところが,会社に入ると立場は一変します.新入社員の皆さまはある給料で会社に雇われているので,当然会社からは支払う給与に見合うだけの『仕事(Output)』が求められます.

学生時代のメモやノート,報告書は,自分が客ですから,どんなに乱雑でもOKでしたが,会社生活でのメモや報告書は,頂く給与に見合う会社へのOutputですので,会社の求めたレベルに達していなければ給料泥棒になります.

この『自分の食い扶持を自分で稼ぐ=自立』の厳しさを自覚せずに入社すると,会社から自分に向けられたメッセージの意味が理解できず,いわゆる『5月病』に掛かり,退社してしまうことになり兼ねません.

私はトヨタ時代5月病で退社を希望する新入社員(Aさん)と面接するときは(トヨタの場合数ヶ月間の導入教育がありますが,この間は学校生活の延長ですので退社希望は出ません.職場配属になって1ヶ月目を5月病としていました)以下のようなことで諭しました.

Aさん,あなたの人生を1冊の自叙伝に例えると,誕生から学校生活まで充実した人生体験が一杯書かれていると思いますが,今あなたは社会生活編の第1頁に居ます.この頁を会社の仕事や人間関係が気に入らないとして逃げた頁にするか,1年とか2年とか仕事・人間関係とがっぷりと向かい合い,得るものを得た上で異動とか退社をする…勝った頁にするかで,Aさんの人生がまるで違うものになってしまいます.

人生の先輩としては,勝ったと言う頁にすることを薦めます.

大阪と京都出身者は,三河地方の飯が塩辛くて口に合わないとして数名退社したのが記憶に残っています.

5月以降の日本が直面する経済状況について

1. 従来からお伝えしていたコロナ対応

2020年2月3日感染の疑いのある乗客を乗せた大型クルーズ船ダイヤモンドプリンセス号を,横浜港に入港させ日本政府の管轄下に置いたことが,事の始まりと記憶しています.

この3年間色々ありましたが,2022年の5月連休は,3回目のワクチン接種の効果もあり,緊急事態宣言もまん延防止も無い中で迎えることができ,各行楽地は大賑わいであったとか…その後も患者数は減少傾向にあると聞きます.

医学的には,今後とも続々と変異株が発生し続けてコロナ禍は続くとされていますが,医療関係者の努力で,特効薬のない中で診療技術の向上と治療方法の改善で重症化を防ぎ,死亡率を低減させてきました.新しいワクチンと有力な治療薬も見つかりつつあり,今後は落ち着いていくと期待されています.

欧米や日本などの医療体制の進んだ国は,過剰な恐怖心は取り除かれ,感染者が急拡大して医療崩壊に至らないように注意しながら,『withコロナ』と言う形で経済活動はコロナ前と同程度に戻る事が期待されるようになりました.

当コラムでは以前から,コロナ禍からの回復時には下記の【A】,【B】のような市場の変化があるので,各社は完成品在庫を削減することは勿論のこと,少ない仕掛かり在庫で生産できる仕組み(生産のLead-Time短縮)に挑戦し,市場の変化に即応できる仕組み作りが急務であると訴えてきました.

【A】コロナ禍による生活環境の変容

数年間 続いた コロナ禍で 市場のトレンドが変わってしまい,コロナ前の商品はコロナ後の市場では通用しないと考えた方が良いと警告してきました.

例えば飲食店,仕事帰りのちょい飲みから,家族と一緒にご馳走を楽しむようになるとか,リモ−トワークが増える事でビジネスウエアー販売が激減するなどです.

現に 自動車業界では 脱炭素化に向けて 大きくトレンドが変わってしまっています….

【B】急激な経済回復に伴うインフレ懸念と,其れに伴う金利上昇,円安

現に米国ではコロナの一段落で市場が活発化し,それに伴って物価上昇の波に晒され,米当局は政策金利を上昇させました.結果として円相場は130円台まで下落,これから先も円安が続き,自給率の低いエネルギー・食料関係は益々値上がりし,国内企業利益を圧迫し続けると恐れが大きくなりました.

2. 2022年2月以降発生した重大事件

【C】ロシアによるウクライナ侵攻

事もあろうに常任理事国のロシアが『特別軍事作戦』と称して武力をもって隣国ウクライナに侵攻しました.この無法行為を傍観すれば,世界秩序が乱れるとして,民主主義を標榜する先進国は団結して対ロシア経済制裁に打って出ました.

この経済制裁によってロシア産の稀少金属や石炭・原油・天然ガスの流通量が減るという事は,国際市場での価格が高騰するという事です.加えてウクライナとロシアは世界の小麦粉等の食料輸出国で,侵攻が始まる前は黒海に面した港からウクライナで生産されて食料(4億人分以上)が世界に向けて出荷されていましたが,今は侵攻によって黒海を封鎖されて出荷できずに居るとのことです.

このまま行けば世界が深刻な食糧危機を迎えることになると警告が発せられています.

専門家の見方は,帝政ロシア⇒ソ連⇒ロシアと続き,近代的な言論の自由を味わってこなかったロシア国民に世論として政府を動かす力は期待できず,むしろ民意に従う民主主義の先進国の方が,ロシアの情報操作に扇動され,物価上昇に我慢しきれずに妥協し,停戦に至るとされています.その期間は,早くて年内,最悪は10年余とされています.

その結果として我々日本企業に働く者は,どんな局面に遭遇するのでしょうか?

自分の身の回りを考えますと,毎日確実に消費する食料とエネルギー,これが品不足で高騰しますと,衣料,住居,娯楽などの出費を抑えざるを得ません.そのため 国内の消費市場が間違いなく縮小していきます.輸入原材料値上げ,円安による原価高の中での売上減ですので,キャッシュが不足し倒産も増えることでしょう.

発展途上国ではどうでしょうか? 一人当たりのGDPで見ますと,日本は28位で年間39千ドルとなっていますが,153位のハイチは2千ドル未満で,191位以下のソマリア,南スーダン,ブルンジは5百ドルを切ります.

これらの国々にも,コロナ禍と,更には食料とエネルギー価格の高騰は押し寄せていきます.これが2022年5月以降の世界になります.

長引けば,途上国から国家経済が破綻して行くことが目に見えています.


日本のみならず,どの国の企業を取っても,裏手から原材料の突然の高騰高,表からは納入代金の回収困難及び市場の縮小の挟み撃ちに合えば,ドミノ倒し的に倒産が広がっていく可能性が高いのです.

その後,更なる課題【D】が生じました.

【D】中国のゼロコロナ政策によるロックダウン
  • 長期化すれば…
  • ⇒地球規模のSupply-Chain毀損で世界経済が急停止
  • ⇒中国の不動産バブル崩壊のおそれ

世界の製造工場とまでいわれている中国で,先月から上海が感染対策としてロックダウンが実施され,一部の製品が世界規模でSupply-Chainが寸断されて製品が出荷できない状態にあります.其れが他の都市に広がっていき,今北京がロックダウンしようとしています.中国各地に及べば,生産されない部品が増え,影響は益々拡大されていきます.

思い返せば,世界で最初にCOVID-19が集団発生したのが武漢市でしたが,中国政府は武漢市を完全封鎖し,見事に沈静化させました.又,世界に先駈けてワクチンを開発しましたが(シノバック製)其れは従来型の不活性化したウイルスを基にして生成したモノで,当時は効果ありとして多くの途上国にも支給しました.

結果として中国は約半年間でコロナを征圧した事になり,習近平体制の優位性を世界に知らしめると同時に,コロナで苦しむ諸外国を尻目に,外国からの感染防止を続けながら経済成長を遂げたのでした.

冬季オリンピックを無観客ではあったモノの期日通り開催し,面目躍如で習近平体制で今年秋には異例の三期目に突入というお膳立てでした….

という局面での,コロナの感染再拡大です.


ここで困ったことに,中国国内で使われているワクチンは,欧米のメッセンジャ(m)RNA型のワクチンとは本質的に異なっています.香港大学の研究では,中国のシノバック製ワクチンはオミクロン等の新型株には効果が無い恐れがあると発表しています.

ロックダウンを緩めれば,中国国民はワクチンの効かない状態で感染力がますます強くなったオミクロン株とさらにはその上を行く複合株との戦いになり,感染爆発⇒医療崩壊の恐れがあります.

中国製のワクチンの優位性を散々宣伝した後なので,今更欧米にmRNA型ワクチンを送って欲しいとは言えないので,2020年武漢での成功体験である完全封鎖の『ゼロ-コロナ政策』で押し通すしかないと習近平政権は決断した模様です.

ゼロ-コロナ政策を取れば,中国政府の面子は立ちますが,その間中国の生産工場は停止し,全世界に向けての部品の出荷は滞ることになります.

【C】の影響によるのエネルギー,食料品は充分に代替えが効きますから,やり繰りで凌ぐことができます.しかし,ここで論じている中国工場で作っている部品は殆どがボルトやクリップのような汎用品ではなく,専用品であると推定されます.専用品であれば代替品の生産には通常数ヶ月を要します.その間全世界に点在する中国製の部品を使う製造工場が,一斉に部品欠で稼働停止に陥ります.つまり全世界の市場に急ブレーキがかかるということです.

この影響は如何ほどのものかは,第三者には推測できませんが,世界経済に甚大な被害を及ぼすことだけは確かなようです.


3年間続いたコロナ禍で各国は現状の産業体制を維持し,労働者を守る為に,市中に多大な現金をばらまいた形になっています.それを頼りに生産活動を本格化しようとする矢先の全世界同時の急ブレーキは,1929年の世界大恐慌と同様の大混乱を招いたとしてもおかしくありません.


中国経済には大きな懸念材料があります.それは不動産バブルです.

例えば昼間の上海は 高層Mansionが立ち並び 繁栄そのものに見えますが,夜になると,その高層マンションには 灯りが点在するだけの薄暗い高層ビルになります.住むためではなく投機のためのMansionなのです.

Mansionの価格は需要と供給の関係で決まりますから,Mansionが儲かるという噂で買い手が殺到し益々値が上がっていきます.勇気ある人達は,手持のMansionを抵当にお金を借り新しいMansionを購入して行きます.経済成長率が約10%,住宅ローンが数%と言う社会状態が引き起こしたバブルなのです.

この話には裏があります.2008年のリーマンショック時に中国も大打撃を受けましたが,輸出を中心とした成長戦略から,内需拡大戦略に切り替えました.本来共産主義の中国では土地は国家のもので 自由の売買はできませんでした.それをある期間に限って個人や企業に貸し与えるいわゆる借地権を設定し,その借地権の売買を広く国民に与えたのでした.ここに市場が生まれ,取引が活発になる事でリーマンショックの影響を軽微に済ませ,以後中国経済を牽引していったのでした.

今進めているゼロ-コロナ政策が長引けば,中国自体の景気が後退し,住宅価格上昇が鈍化した時,一気に不動産バブルの崩壊が始まり,中国経済は危機に直面することになります.


繰り返しますと,今中国で展開しているゼロ-コロナ政策は

  • [1] 中国国内生産に大ダメージを与え,更に全世界規模の製造業にSupply-Chainの毀損による生産に急停止を発生させ,大恐慌の引き金になる
  • [2] 不動産バブル崩壊の起点になると,リーマンショックの再来になる

ウクライナ侵攻に端を発したエネルギー・食料の高騰になかで今,習近平政権は上記[1],[2]にいたる極めて際どいことをやっているのです.

2022年5月,日本では初夏の心地よい日が続いていますが,背後にはそんな危険性が忍び寄っているのです.

こんな状況下では,弊社がお勧めしている『Jコスト改革』ができているか否かが企業の生死を分けると考えております.すなわち,以下が弊社のお勧めですが,御社は大丈夫なのでしょうか?

  • Order-to-Delivery-Lead-Time:1週間以内
  • Total Lead-Time⇒棚卸資産回転数(連結)10回/年以上
  • \begin{equation} 基礎収益力 = \frac{粗利}{棚卸資産} \ge 1.0 \end{equation}

今,株主総会の季節です.財務諸表を紐解いて計算してみてください.何をすべきかは,『Jコスト改革の考え方』のコラムを参考にして下さい.

万一の場合も,御社が生き残ることを願っております.


2022年5月吉日
(株)Jコスト研究所 代表 田中正知


追伸 『大学と大学校の違い』の続きは次回に致します



2022年4月

季節のご挨拶

昨年末から急速に増えたオミクロン株は減り始め,3月22日には蔓延防止法の適用が全国的に解除されました.

いよいよ桜の開花とともにアフターコロナに向けてアクセル全開,という矢先にロシアによるウクライナ侵攻が始まりました.

武力をもって他国の領土に攻め込むなどとは言語道断と,西側諸国は経済封鎖に踏み切りました.この経済封鎖によって半年も経てばロシア経済はガタガタになり,戦争遂行は不可能になると報じられていますが,規制する側にもエネルギーや鉱物資源が市場から減ることによって成長が鈍化し,物価が急上昇するとされています.

このように世界中の企業は今,

  1. コロナからの復帰と,
  2. ノンカーボン化に加え,
  3. ロシア経済制裁による世界市場の激変

に対応すべく,2022年は大変革を迫られています.

その中にあって日本はどうすべきか……今から30年前,バブル崩壊前の日本の企業であれば,欧米諸国に負けないように頑張りましょう!でことは済んだと思いますが,コロナ対応で明らかになってきたように,1990年以降の日本経済・社会はズルズルと世界の趨勢から置いてきぼりにされ,かつては『危機の円買い』とも言われていましたが,今回のウクライナ危機に関しては,逆に円が売られ,ズルズルと安くなって来ていて,不気味です.

バブル崩壊の1990年はソ連崩壊の年でもありました.ソ連は解体され15カ国の共和国に分かれ,計画経済から市場経済に大変換しました.日本の明治維新に相当するほどの変化であったと想像できます.その中の優等生は,バルト三国の北の端の人口130万人の小国エストニアで,いち早く電子立国を目指し,行政改革を断行して電子化し,サーバーを海外の数か所に分散して持ち,NATOに加盟した上で,海外のIT企業を誘致し,『昔シリコンバレー今エストニア』と言われる程になったと言います.

大きくて豊かだったウクライナは,地方豪族の内輪もめと汚職が蔓延しているところロシアに攻め込まれ,クリミア半島を失いました.そこで目を覚まし,エストニアを見習って電子立国を目指して改革を進めて行きました.そしてNATO加盟も目指したところ,プーチンの逆鱗に触れ,それが今のロシアの侵攻に繋がったとされています.

ウクライナのデジタル担当大臣が,イーロンマスク氏が準備していた衛星通信サービスを使わして欲しい頼み込み,3月10日にトラックいっぱいの通信機と蓄電池が届けられ,ロシアによって破壊された中で唯一の生き残った通信網として大活躍しているという話も伝わってきています.

今まで見ることができなかった戦争の惨状が,これを通じて全世界に伝わり,世界の世論を動かしているということを知りました.

3日で陥落するとみられていたウクライナが,しぶとく抵抗し,一部で反転攻勢に出ているのは,電子立国を目指して整備されたインフラが,たとえ建物が爆破されても,機能していて,ウクライナ全土でスクラムを組んで頑強に抵抗しているのだと推察されます.


振り返って我々の国,日本を見たとき,他国の侵攻だけで無く,首都直下型地震,東南海地震による津波,富士山の噴火等,30年以内に高い確率で起きることが予言されています.ウクライナの惨状を見ながらも,明日は我が身と思って,個人としても,国家としても,身の回りを見直し,備えていく必要があると痛感しました.

窓の外に目をやれば,のどかな日差しの下で桜が満開です.物事をスタートする4月がきました.諸官庁は年度変わりですし,民間会社の多くは期の始めです.千里の道も一歩からと申します.気持ちを新たにして業務に取り組み『危機』を『飛躍の機会』に変えるご活躍を期待しております.

若い世代にとってみれば4月といえば入学式であり,入社式であると思います.そこで以下のようなテーマで数回に亘ってお話ししたいと思います.

大学大学校はどう違うのか

目次

次回の目次

  • [3] 日本と正反対のドイツの大学
  • [4] ここまでの仮説で自分自身の生涯を振り返ると
  • [5] 焼け跡から奇跡的復興の日本がこの30年間,なぜ取り残されたか?
  • [6] 今後どうすべきか

[0] はじめに

事の始まりは,本コラムで紹介している『Jコスト論』が何故拡がらないのか?という疑問からでした.

『Jコスト論』をお話しすれば誰もが納得してくれます.今のやり方は時間概念が抜けて居ると賛同してくれます.

でも,これを自社に展開しようとする人はなかなか現われませんでした.現れたとしても展開して行く途中で頑強な抵抗に遭います.

ところが先々回からこのコラムで御紹介しましたように,2019年,自ら進んで『Jコスト論』を展開したいと申し出る会社が中国に現れました.実際の現地指導はコロナ禍のために四ヶ月で中断しましたが,連絡が途絶えた後も自力で展開していき,1年間で見事な成果を上げました.そのやり方も今までにないもので,総経理が先頭に立ち,経理部が事務局になり,『社内業務の進め方改革』から『社内教育資料』までの改革を進めたのでした.


振り返れば,『Jコスト論』の論文発表は2003年.2005年から始まった東大MMRCインストラクタースクールでは『ものづくり会計学』として講義し,2009年『トヨタ式カイゼンの会計学』上梓(1万部余販売)しています.出版と共に講演依頼も来て,毎年20回程講演して廻りました.

縁あって5社ほど導入に取り組みましたが工場敷地内の改革に終わりました.もっとも大々的に取り組んだのが2015年からのK社で,かなりの成果を上げましたが,経理部門は参加せず工場改革の規模となっています.


中国では,2015年に『トヨタ式カイゼンの会計学』中国語版出版を機に現地コンサルタントと契約し,多くは講演会でしたが,5社の改革の手伝いをしました.著書出版から数えて日本では10年経っても現れなかったのに,なぜ中国では,3年目に,総経理が手をあげて導入を求める会社が現れたのか?これが疑問でした.


広く世界に目を転じると,2020年のはじめから全世界にコロナパンデミックが始まり,各国の政府が『コロナ対策』という同じ問題に同時に対峙し,その対応と結果には,大きな差が白日のもとに晒されることになりました.全世界の行政が共通一次試験を受けて,その結果が発表されたようなものでした.75年前まで同じ国だった韓国と台湾は,IT技術を駆使して日本よりも遙か先を走っていました.韓国は民度の違いか?ここ数か月は日本より多い感染者を出していますが,台湾は依然としてトップランナーを維持しています.欧米諸国では,日本に比べて桁違いの感染者数を出しましたが,政府の対応策は理路整然としていて,理系の私には納得できるものでした.

一方で,日本の官僚機構は太平洋戦争直後の混乱からの奇跡的な回復成し遂げたとして高い評価でしたが,今回のコロナ禍では『アベノマスク』で代表される体たらく,例えばPCR検査の母数を数えず,陽性者数のみまちまちの時間にFaxで送り,そのFaxの山を暇な時に手入力で集計し,本日の感染者数として発表,それをベースに政策立案をしていました.すべてが出たとこ勝負,行き当たりばったり……に見えていました.

トヨタ式の『何故・なぜ・ナゼ…』を繰り返して行きますと,本来大学で学ぶべき『未知なるものへの取り組み方』,『科学的アプローチ』が,日本社会から抜け落ちているという疑いが出てきました.

これを突き詰めて,私なりに立てた仮説が今回のテーマなのです.

『大学』と『大学校』はどう違うのか

この発想の原点は,たまたま社命で『ものつくり大学』準備段階から出向し,どんな大学にすべきか侃侃諤諤と議論し,大学を『教授』としてゼロから作り上げるという極めて稀な経験をしたことにあります.

[1] Technologistとはどんな人?

『ものつくり大学』設立の根拠となる『ものづくり基本法』では,ドラッカーの説に従って,これからの社会に必要なテクノロジストを育てるためにものつくり大学を設置するとありました.しからば,テクノロジストとはどのような要件を備えた人間なのか?準備委員会のメンバーでありドラッカーの翻訳の大家上田敦生先生に講義して頂きましたが,要約すれば以下のようなことでした.

“極めて多くの知的労働者が,知的労働と肉体労働の両方を行う.そのような人たちをテクノロジストと呼ぶ.テクノロジストこそ先進国における唯一の競争力要因である”

多くの人は,知的労働と言うと事務所,肉体労働というと現場作業を連想すると思いますが,ここでは違う定義と考えて下さい.料理人を例にとりましょう.決められた通りのレシピで料理を作り続けるのが肉体労働です.

一方で,客の好みと体調を見極め,手元の材料の状態からレシピを変え,客に喜んでもらえる味の料理を作る時,その料理人は知的労働と肉体労働の両方を同時にしたと考えるのです.事務所でもルーチン通りの業務を進め続ければそれは肉体労働で,状況に応じて業務の進め方を変えれば,それは知的労働と肉体労働の両方を同時にやったテクノロジストの仕事になるわけです.

ものづくり大学においてはテクノロジストの定義を医学知識を身につけた上で,自らメスを持って手術をする外科医のように,工学の知識を身につけた上で,みずからの手でモノが作れる万能エンジニアと定義し,開設準備を進めました.

[2] "大学"と"大学校"とは何が違うのか

ものつくり大学設立委員会の我々にとっての当面の課題は,厚労省所管の『能開大(職業能力開発大学校)』(K系)に対して,文科省・厚労省が共同で経営する『ものつくり大学』(D系)は,どう違う機軸を生み出して運営するかでした.我々が出した結論は以下の通りでした.

(2-1) 大学(D系)は学問(真理の研究)を行う場である

大学(D系)は,学問の自由が保証され,多くの研究者(教授等)が自分の研究室を持ち,そこで様々なテーマの研究を行っています.教授たちの評価は,いかに優れた研究をし論文を発表したかにかかっています.そのために国庫から研究費が出ており,テーマによっては年間数億円というのもあります.研究とは未知なるものを手の内に入れ形式知化することを言います.

もう一つの業務は,自分のゼミナールを持ち,後継の研究者を育成することです.教授は,学生に見せながら自分の研究することで必要な技術・手法を学ばせ,ディスカッションすることでものの見方考え方を鍛えます.学生を育てるためには手間が掛かりますから,一人当たり何がしかの手当が付きますが,何人の学生を育てようが,学者としての業績にはなりません.

大学は学生から見れば大規模な屋台村に似ています.それぞれの屋台(研究室)では世界最先端の美味しそうな研究をして居ます.どの屋台に立ち寄り,どの研究をかじるかは学生の自由です.席には限りがありますから先手必勝です.ぼんやりしているとろくな食事も取れず,終わってしまうこともありえます.

文部科学省の目線で見れば,いつかは世のため人のためになる研究をさせるために,一流の学者を集め研究させているのが大学であると同時に,今の学者より優秀な学者を育てて次世代に備えるのも,その大学の任務としているのです.

このことを言いかえれば,大学内では教授は真理の探究が仕事であり,学生はそれを見習うのが仕事であると言えます.裏を返せば,実社会に出た後の『食い扶持を稼ぐ能力』は大学には期待されていませんから,ぼんやりと大学を卒業し,食うに困るか否かは本人の心掛け次第ということになります.

後から説明しますが,食い扶持に困らない技能技術を身に着けるのは専門学校の役目だということです.

大学の歴史を紐解けば,中世ヨーロッパで始まり神学・法学・医学が主体で,牧師,弁護士・裁判官・検事,医者,等の職に就く事になっていました.現在の大学では理系3/文系7で圧倒的に文系が多いのですが,文学部と経済学部は実業界からかけ離れた学問となっているので,会社に入っても直接役に立つモノは無いと考えた方が良いのです.例えば,英文学を専攻したから通訳ができると考えたらとんでもなく甘いと言わざるを得ません.ビジネスの会話は,社運をかけた駆け引きの場ですから,英国とビジネスをするのであれば,会社としては英国のことを知り尽くした有能な英国人を社員として雇って責任ある地位につけるのが一番なのです.経営学を学んで実社会に出るのであれば,中小企業診断士の資格を取得する事をお勧めします.この資格を持っていれば,会社のどの部署に行っても即戦力として働ける知識があるからです.

(2-2) 大学校(K系)は技能技術者を育てる機関である

学校の『校』の訓読みは『かせ』で,拘束する意味も含まれていて,『学校』は学ぶ建物という意味の他に,目的に合わせて既存の学問体系から必要な部分を切り出してきて,それのみを学ばせ,目的とする人材を育てる機関という意味も持っています.

教える人は教授ではなく『教諭』と呼ばれ,その分野の名人・達人が当りますが,彼には研究活動は期待されて居ません.学ぶ人の学習目標は教師のレベルに近づくことであり,教師のレベルを超えることは期待されていません.新技術を開発することも期待されていません.

教育する対象者は,小学校では児童,中学校・高等学校は生徒と呼ばれます.高校を出た者が学ぶ学校は,多くは『○○専門学校』と呼ばれますが,『○○大学校』と名乗る学校もあります.『大学校』には法的な制約は薄く,自由に設置でき,現に企業内研修施設で大学校を名乗っているところもあります.公的には『防衛大学校』『気象大学校』等が有名です.高校を得てから学ぶ大学校や専門学校の卒業生は,研究者では無いので『学位』は与えられませんが,社会に出て直ちに役に立つ『資格』を得る事ができます.会社にとっては即戦力となる貴重な人材になります.

言い換えると,『大学校』卒業生は,即戦力になるので会社では,現状の業務をテキパキと効率良くこなすことを期待されますが,時代に合わせてより効率的な仕組みに再構築することは,彼らには期待されていません.それゆえ彼らだけの会社になると,日常活動は支障が無い安心しているうちに,世間の進歩からは置いてきぼりになる恐れがあります.

このように,『大学校』は実務のプロを育成する機関であり,『大学』は,真理を探求する研究者を育てる機関である.大学卒業生は会社で採用しても即戦力にはならないが,社内で再教育することによって先を読み,現状を変えていく人材,即ち管理職から経営陣となる人材になる事が期待できるのです.

(2-3) 大学受験勉強とは何か

2-3-1. 共通一次試験で満点でもクイズ番組でしか役に立ちません

本稿のテーマでもあるので繰り返し述べますが,お受験と称し,幼稚園から高校まで進学に有利な学校を出て一流大学に入学しようと猛勉強する風潮があります.しかし,大学入学試験は,広い学問体系の中から文部科学省が選定した『高校教育課程』の中で,採点しやすい問題しか出題されません.私の頃は『傾向と対策』という言葉が流行って居ました.しっかりと日日の授業を受けて勉強すれば,文部科学省が期待したような立派な社会人としての『歴史認識』や『人生観』と言った教養を身につけることができます.

しかし受験勉強としていかに効率よく良い点を取るかという姿勢で勉強したときは,試験に出るところだけを重点に勉強することになり,単なる暗記作業になってしまいます.このようにして学んだ学問は,たとえ共通一次試験で満点を取っても,断片知識の寄せ集めに過ぎず,テレビのクイズ番組で賞金稼ぎするぐらいしか役に立たないのです.

因みに,1970年代のトヨタでは商業卒は事務員,工業卒は技術員として配属されましたが,普通高校卒は,教養は高いのですが,会社で即戦力となる特技がないので,適性検査と訓練を受け現場作業員として配属されました.能力のある人間はたちまち現場で頭角を現し,教養の高さを活かしてリーダーから職長に,更に製造課長に出世しましたが,事務・技術員から課長になるのは稀でした.普通高校で教養を身に付けただけではダメで,その後の努力が大事だということが言いたいのです.

2-3-2. 大学は自ら学ぶ場所,ぼんやりしていると何も身につかない

ここからはこの4月から大学に入った新入学生の目線で説明します.

小学校から高等学校までの先生は『教諭』と言い,教育心理学などの専門知識を学んだ上,教育実習をして教職免許を取得したその任に当たっています.教えることだけが仕事ですから落ちこぼれを出さないように生徒たちに手取り足取り教え込みます.

ところが大学教授は,教職免許は全く関係なく,立派な論文を書き学位を取った人がなるのです.つまり教える技術はどうでもいいということです.そして学ぶ方は『学生』と呼ばれ,自立したオトナであるという意味が隠されているのです.

入学したての教養課程では,教室での講義はありますが,1時間の講義を受けたということは,予習に1時間,復習に1時間合計3時間勉強したとみなしているのです.

講義の内容は担当する教授が自ら選んだ時代の最先端をゆく理論であるのが普通です.筆者の思い出では,理系の数学の初日,高等学校でやってきたことは初等数学と一言で片付けられ,学部の研究に耐えるように高等数学の基礎知識を学びますが,必死に食らい着きましたが全部は理解できませんでした.

高等学校までは先生は教えるだけが仕事ですから生徒の理解度を確認しながら授業を進めていきますが,大学の先生は自らの研究を進めることが第一の仕事で,教える事は二の次ですし,教えたい事が沢山あるので,個々の学生の理解度を確認している暇がありません.期末テストは,成績の差を作るだけですが,講義が理解できてない学生は単位を与えません.単位が欲しければ来年再度授業を受ければよいのです.

大学運営と言う観点から見れば,費用は授業料だけど賄えないので,多額の入学金を徴収しています.そのため留年する学生は経常上不利になるので,よほどのことがない限り卒業させてしまいます.

巷の噂では,懸命に受験勉強した学生ほど入学すると安心してしまって勉強しなくなると言いますが,先に言いましたように共通一次試験百点満点でもその中身は『高校課程』のつまみ食いに過ぎませんから,実社会で稼げるのは,クイズ番組の回答者になるしかありません.

更に,先にお話ししましたが『大学』とは,学問すなわち真理の探求の場であり,次世代の研究者を育成する場所でもあります.何をどれだけ研究しても自由です.学生たちは,ここで研究している教授等のもとで,学問の方法学び,自らの力で師である教授を超える新しい分野を開拓し,その証の学位論文(学士・修士・博士)を提出,認められると学位を授かりますが,一般には実務に直結するモノではないので『大学』や『研究所』以外では,学位では飯が食えません.

法学部卒は司法試験,医学部卒は医師免許,教育学部卒は教員免状と言うように,資格を持っていないと,ICTが発達し,AIの活用が本格化した今日,希望する職種への就職はきわめて困難になっています.

学生諸君は,卒業後の人生に比べて,大学在学期間は時間にゆとりがあります.大学での高邁な真理の追求を通じて『未知のものを形式知化する』ノウハウを身につけ,将来の会社幹部としての素養を得た上で,将来やりたい仕事の近くにある『資格』を大学在学中に取得しておく事が,肝要です.

今年めでたく大学入学を果たした学生諸君は,このことを念頭に勉学に励んでいただきたいと願う次第です.


2022年4月吉日
(株)Jコスト研究所 代表 田中正知



2022年1月

2022年 年頭のご挨拶

遅ればせながら,明けましておめでとうございます.

本年もよろしくお願いいたします.

このホームページも, コロナ禍の影響で 丸一年お休みを頂いてしまいました.

誠に申し訳ありませんでした.

2022年度は,『Jコスト論』 普及のために頑張っていきたいと思っております.


TQCの基本原理は通常PDCAと覚えます.更地に計画を立てる場合はこれでよいのですが,前年に引き継いだ業務を今年どのように展開させるかという場合は,まず今までの反省があって,その上に立って次の展開をする必要があります.

つまりこの場合はCAPDつまり,前年度の反省が1番にあり,それを分析した結果,今年度の実施計画ができるわけです.


この文脈に従って,まずこのコラム2019年12月号の記事の続きからお話ししたいと思います.(さかのぼって,その記事をお読みください…)


2019年6月,中国河南省にある国営企業『新航グループ』と改善支援の契約を結び,9月に幹部に『本流トヨタ方式』と『Jコスト論』の研修会を実施し,10月から翌年4月まで第一次展開として4工場の改善を現地指導することになりました.

ところが突然のコロナ騒動で2020年から渡航禁止になり,以後2022年の今日まで中国には渡れない状況が続いております.

田中が行けなくなった状況下でも,彼らは自分達だけで改善を進め成果を上げ,コロナの影響で悩む全中国の企業にこの成果を伝えるべきだという董事長の判断で,2019年〜2020年の活動内容は10月21日に中国全土に向けてネット配信されました.この件はこのHP内でもご案内いたしましたが,ご覧になられた方もいると思います.

今はもう配信されていませんが,下記に写真で記録してあります.

この改善成果に関する弊社のコメントは12月号に詳しく記載しましたが,中国における精益活動の元締めである趙克強博士は,この成果発表を高く評価し機関誌『PlanetLEAN』に投稿しました.是非ご覧ください.

The J-Cost theory - Planet Lean on boosting financial results

『Jコスト論』が第三者によって英文で紹介された最初の事例となりました.


2020年秋からは,この活動を残りの工場全部にも展開していきました.時々リモート会議を持ち,質問に答え,改善の急所の講義もしました.


2021年秋,『新航グループ』から大きな成果を上げたので,その報告と,感謝の意の表したい,同時に田中の80歳の誕生祝いをしたいと連絡がありました.

10月10日10時(日本時間),『新航グループ』『佐吉諮問(提携コンサル)』『趙克強博士』『Jコスト研』4者が国際リモート会議を行いました.

最初に『新航グループ』のプロモーション動画がありました.

その後,副総経理から改革の総括説明があり,

『会社としては,点から線へ,線から面へと物の見方を広げてきたが,Jコスト論を学んで新たに時間軸を加えることによって,会社の中の事象が平面から立体に変わった心境である…

経営目標は売上高利益率(PL)から資産利益率(BS)に変更し,現場では生産の流れを速くし,全社的には資金の流れを速くする活動に転じ,全社一体となった活動が開始され,着々と成果を上げつつある…』

旨の報告がありました.

その後現場の推進者の声を集めた動画の上映があり,各工場の改善リーダーたちが,

『こんな転換ができた…』

『このようにして現場を指導した…』

『工場で働く全員が滞留させてはいけないと思っている…』

等々自信を持って発言していました.下記がその動画です.

それから,リモート会議は誕生祝賀会になりました.

その時,趙克強博士から中国語で祝辞があり,日本語の手紙を渡されました.

『仁者寿賀田中正知』

その後副総経理からは,田中の傘寿の誕生日を祝う綺麗な『寄せ書風小冊子』を頂きました.そのPDF版が後日届きました.

小冊子の表紙には『水を飲む者はその源を思い,成果を出したときに師を思う.』その後に『田中先生80歳の誕生日おめでとうございます』と続いていました.

小冊子の中味は,指導したときのスナップ写真と,会社幹部のこれからの取り組みに対する決意表明でした.

下記がそのPDFです

『飲其流者懐其源,学其成時念吾師』

田中にとっては,80年の人生で初めての出来事で,感慨深いものがありました.

中国のこの会社の裏話として,経理部長がそれまでの改善活動に疑問を持ち,拙著『トヨタ式カイゼンの会計学』中国語訳を読み,『これだ!』と総経理を説得し上海の講演会場まで連れてきたとか…

改善契約が成立すると彼女は事務局を買って出て,今まで金額でしか把握していなかった工場各部署の原材料や中間製品の在庫量を,毎日の平均使用量で割って,在庫滞留日数何日分と言う指標を併記し,全工場に提示しました.

この経理部長は自らも在庫金額と滞留日数の表を片手に,時には総経理のお供をしながら工場長とともに現場で実態を確認し,対策の推進を促して廻ったといいます.

添付写真をご覧ください.2020年成果をNet背信したときの1コマですが,この女性が件の経理部長で後ろに写っている工場長に対して,在庫データを押し付け改善を進めさせたのでした.

因みに,製造現場にとっては原価低減は人員削減であり,厳しい負荷ですが,在庫低減はいかようにでも対応できます.しかし,在庫を減らしても欠品にならないようにするためには,品質不良や設備故障の低減,出勤率の安定化等,職場体質の強化が必須になります.

実際,職場内の滞留を無くすことで,人員,設備に余力があることが分かり,工場スペースはガラ空きになります.何より,職場内の在庫が現金になり浮いてくるのです.

粗利2割,月商10億円の会社が,滞留3ヶ月を2ヶ月(回転数を4回⇒6回)に改善すればPL上の毎月の粗利2億円の他にキャッシュフローとして約8億円の現金が手元に入ります.

この余ってきた経営資源を,新製品開発に廻すなどして会社は更なる飛躍を遂げる事ができるのです.

中国のこの新航グループはそれを理解でき,その方向への改革に乗り出したのでした.そして,この『Jコスト論』に基づいた在庫低減活動こそは,2021年1月のこのコラムで,皆さまにお伝えし,お薦めした2021年度アフターコロナに向けてやるべき社内改革でした.

恐れ入りますが,もう一度2021年1月の所信表明の記事を熟読した上で,今回掲載した『新航グループ』の発表を見直してください.


2019年に田中が彼等に教えたことは

  1. 「トヨタ生産方式の二本柱は,『自働化(品質を絶対確保)』して『JustInTime(滞留をなくしできたての商品をおとどけする)』ようになれば,利益は付いてくると言うことを意味している.

  2. この世にあるあらゆるものは時間とともに動いている.

    たとえばこの瞬間倉庫にあるAと言う100万元の在庫は,何日間で使い切ってしまうのか,Bと言う10トンのインゴットは何日でなくなるのか,無くなるまでの時間を把握すれば,今の仕組みから見て適正か?多すぎるか?が分かる.

    減っていく速さを正確に把握するためには,先ず市場で毎日平均何個売れているかを把握する必要がある.次にその売れる速さに合わせて生産するには,できるだけ小ロットで多回生産する必要がある….

  3. 『JustInTime』生産の模範は中国料理のレストランである.

    迷ったら中国料理を食べに行けば答えが出る.

等の基本的なことだけで,後は自分達で考える様に誘導したのでした.


その彼等が『自ら考えて,自ら成す』的に,自分達でやってきた事を発表しているのですが,その内容は,2021年度のアフターコロナに向けて日本企業がやるべきこととして纏めた内容を辿っていることを気づいて頂きたく思います.

このことを違う形で表現すれば,2019年10・11・12月の3ヶ月間しか現場改善指導できなかった『新航グループ』は,総経理以下全社一丸となって2021年まで『Jコスト論に基づく改革』を進める中で,

  1. 部署毎の在庫品名と在庫量から在庫期間を計算し,改革開始時からどれだけ削減したか計算でき,更に会社全体では基礎収益力(≡粗利÷棚卸資産)がどれだけ向上したか測定するプログラムを作成したこと

  2. 各工場単位で改革推進チームを編成し,工場の実態を反映させた業務分掌を作製し,更に社員に対する教育資料を編纂,教育実施してきたこと

  3. 改革を進めていくと,従来の調達・製造・営業・納品物流等の工程別管理では限界があることに気付いたこと

等の改革が進められたことが窺えます.


今回,このコラムでは敢えて『新航グループ』から頂いた資料をそのまま掲載しました.その意図は,読者の皆さまご自身で

  • 【A】2021年末における皆さまの工場の実態
  • 【B】2021年1月弊社がアフターコロナに向けてお薦めした取り組み
  • 【C】2021年10月に『新航グループ』から頂いた資料
を比較すれば,『Jコスト論』から見た御社の位置付けが明らかになります.

位置付けが明らかになれば,御社の2022年度方針で重点を置くべき事柄が明確になります.万一欠けていることがあれば,追加すれば良いのです.

『過ちては改むるに憚ること勿れ』です.

岸田新内閣は,その範を垂れています.国民もそれに従いましょう.

コロナ禍はオミクロン株による第6波が迫ってきていますが,感染力は強いモノの幸い軽症の様子です.桜が咲く頃になれば,暖かさで流行が収まると思われます.この時からいわゆる『アフターコロナ』の経済活動が先進国から始まるとでしょう.

このうねりに乗り遅れることなく御社が飛躍することを願ってやみません.


2022年1月吉日
(株)Jコスト研究所 代表 田中正知



2021年1月

2021年 年頭のご挨拶

遅ればせながら,年頭の御挨拶を申し上げます.

御社のますますのご発展をお祈りいたしますとともに,本年も相変わらずのお引き回しの程をお願いいたします.

ところで,正月の伝統の七草粥を心静かに味わっていたとき,ものづくりに携わる我々にとって大きな影響を受ける次の事件が起きました.

  • 【A】米国現職のトランプ大統領がけしかけた議会乱入事件……
  • 【B】東京で1日に2447人のコロナ感染者……

昨年末を約束したお話しに入り前に,まずこれに触れてみたいと思います.


【A】について

  1. 自由陣営のリーダーで,巨大国家アメリカの正体を世界に露呈してしまい,これが今後の世界情勢にどのような影響を及ぼすのか……心配されます.自浄作用が働き始めたので,救いがあります.
  2. アカウント永久停止等は,国民に選ばれた大統領より強い力を持っている事になり,全世界はGAFAに屈したということなのか……心配です.
  3. ヒトラーは,ナチスを結成し,草の根から14年掛けて天下を取ったのに,トランプ氏Twitterで,司会業から7年で大統領になりました.信者は全盛期7千万人とか……,彼は天性だけでここまできたが,ナチスの技法があれば,核のボタンを片手に世界制覇も可能だったという話があります.この事実を知ってしまったので,世界のあちこちで,第2,第3のトランプ氏が生まれてきそうで,怖さを感じてしまいます.コロナ以上の恐怖です.

【B】のニュースを聞いて,先ず頭に下記都々逸と,ミッドウェイ海戦でした.

♪『ああ』して『こう』すりゃ『こう』なるモノと,知りつつ『ああ』して『こう』なった ♪

ミッドウェイ海戦とは

1941年12月の真珠湾攻撃時,米軍空母の姿がなかったので,洋上の味方艦隊が米軍機に攻撃される事をおそれ,第1波攻撃だけで引きあげたといわれて居ます.

一方,1942年6月のミッドウェイ島攻撃時も,米国空母の姿は無かったのに,『洋上の味方艦隊が米軍機に攻撃される事』は考えず,『絶好のチャンス』として,第2波の攻撃を決定,その準備中の最悪のTimingに米軍機の攻撃を受け,空母の甲板上の爆弾が誘爆し,全空母と全艦載機,何よりも優秀なパイロットを失ってしまったといいます.軍の極秘事項とされ,処罰どころか責任追及も無かった……とされています.この話は以下の『言霊信仰』や『空気の話』が関係していそうです.

『言霊信仰』

ある言葉を発すると,その言霊が万物の霊魂に働きかけ,その言葉を実現してしまうという信仰が,社会の隅々まで広まっています.親が病気になったとき,遺産相続の話は,『縁起でも無い』と咎められます.

逆に『コロナなんか直ぐ消える』とみんなが考えると言霊が消してくれる,と無意識のうちに考えている……最悪の事態を考えず,上手くいった時だけを考えてものを実行する.

『空気の話』

昔,山本七平(イザヤ・ベンダサン)が,会議の席では上司に忖度し,同僚に気を遣い,理路整然とした論理では無く会議室に漂う『空気』で物事を決めてしまうと嘆いていました.

1月は多くの会社にとって,年度替わりの月で,おそらく会社の年度方針が出されたり,御自身が自部署の方針をお作りになったりしていると思います.

今一度 ここに書いた 日本人のさがでともいえる『言霊信仰』や『空気の話』の観点で論理は『理路整然』か,実行計画は5W1Hの観点から見て,細部に展開されて居るかをご確認下さい.


さて本題に戻って,年末の続きのお話をいたします.続きですので,第7章から始めます.

最近,DX(デジタル・トランスフォーメーション)が脚光を浴びています.

デジタル技術を駆使して,戦略的な経営をやってこうということだと理解していますが,その前提としては各社の工場がよく訓練された軍隊のように『俊敏に対応できる』ことが大前提と思います.

この『俊敏に対応できる』工場こそが弊社が永年推進してきた『本流トヨタ方式』が目指す工場の姿そのものなのです.『御社にDXを導入するには如何にすべきか・・・』と考えながら第7章をお読み下さい.

[7] 2021年 日本のものづくりは何を目指すべきか

7-1. 今までの改革は,的外れではありませんか?

カルロス・ゴーン氏が,非合法な手段で日本から逃亡して1年になりますが,1999年に彼が日産の倒産の危機を救い,V字回復させた事は事実です.

当時の日本の産業界は 『労働生産性という落とし穴』に嵌まっていて,重症患者が日産自動車だったのでした.この辺のことは,このホームページの連載コラム『Jコスト改革の考え方』第15回に詳しく書いてあります.先ずそのコラムを熟読して頂きたく思います .

ゴーン氏は1999年の『日産リバイバルプラン』の中で,日産の間違いを以下の様に指摘しています.

購入費用60%@
一般管理費23%A
製造原価17%B研究開発6%C
内製加工費11%減価償却費など6%D
労務費など5%E
DE:筆者推定

当時の日産がやっていた活動で低減しうるのは,E労務費(原価の5%)に過ぎないことが分かっていなかった……

ゴーン氏は役員会の言語を英語にして(『言霊』を排除)TQMの手法で成果をコミットさせ,全方面で改革を断行し,2003年までの4年間で2.1兆円の借金を返済したといいます.

筆者は,自社内のみならずSupply-Chainの隅々まで点検し,あるべき姿に向かって改革を押し進めていく……会計的に見れば,PLだけでなくBSもCFも原因に遡って見直していく……という部分は賛成します.

20年あまり経ちましたが,大変残念なことに,大学の先生たちはゴーン氏の指摘を理解できず,かつて恩師から教わった通りの百年前のGMのスローン氏の経営技法や,テイラーシステム旧態然と学生に教え続けています.

経営者も,『労働生産性の落とし穴』に嵌まり『生産性本部』とか『ものづくり革新本部』といった組織を作り,優秀な人材を投入し作業改善に力を入れています.

彼らスタッフに掛かる費用は丼勘定で一般管理費に計上され,現場改善効果は支払い労務費に計上されますから……費目が違うので『費用対効果』の測定はやっていないと思いますが,費用の10%でも回収できていれば御の字と思います.

7-2. 自社を,より繁栄させる為にはどうするか?

各企業で設置されている『生産性本部』の本来の役目は『自社をより繁栄させるため』だと思います.では具体的に何をどうすればよいのかの問いに,以下の3つの【答】が考えられます.

  • 【答-1】売上は現状維持とし,原価低減して利益額を上げる!
  • 【答-2】設備投資等をして増産を図り,売上を増やし利益を上げる!
  • 【答-3】投資せずLead-Time短縮という切り口で業務改革を推進する!

以下順を追って吟味していきましょう.

【答-1】売上は現状維持とし,原価低減して利益額を上げる!

これは もっとも多くの 企業で取り組んでいる方法です.現状の売上高に対して生産能力に余剰があるので,その分の人員を減らし,設備を減らす,と言う活動になります.

このテーマを追求すると『新聞売り子の問題』という古典的なOR(オペレーションリサーチ)の問題に辿り着きます.講習では『統計的に計算した数量を余分に仕入れて置く』と言う解と共に,実行すると客はドンドン減っていき,潰れるという『オチ』も教わります.買えなかった客の心理は数式では解けないというORの限界も教わります.

新聞と違い一般の製品は在庫を持って,生産・販売していきますが,長期的に見れば売れなくなっていき,最後は生産打ち切りになります.原価低減を狙って売れに合わせた生産規模を縮小して行くことは『店じまいへの道』でしかありません

植物達が 毎年花を咲かせ実を成らせ子孫を増やすように,会社も寸暇を惜しんで子孫(新製品・新製法)を産み育て,更なる成長をねらっていくべきでしょう.

【答-2】設備投資等をして増産を図り,売上を増やし利益を上げる

積極的な意欲的な話で大変結構なことですが,資金回収に時間がかかるという欠点があります. 例えば新工場を建設して機械を設置し,人を集めて訓練し生産に移るとなると2〜3年掛かります.製品は市場に出荷され,代金を回収されるまでにはさらにまた時間がかかります.

残念な例としては,シャープの危機が有名で,亀山工場で作った液晶パネル『亀山モデル』は有名となったので堺に巨大な工場を建設し増産に打って出ましたが,市場が伸びず,赤字が積み上がっていき,最終的には台湾企業に下りました.

急速に成長して行った『いきなりステーキ』も 流石に店舗数が増えすぎて,共食い現象になり, 最近はまた 急速に閉店が続いている様子です.

国産初のジェット旅客機は,開発が長引いたところにこのコロナで,1兆円余の損失を抱え,先が見えなくなっています.

このように,業績を伸ばせれば大変に結構この上ないのですが,失敗のリスクが高いのも確かです.


こうして見てきますと,次の二つは,どなたにもお勧めできる方法ではないことがわかります.

  • 【答-1】売上は現状維持とし,原価低減して利益額を上げる!
  • 【答-2】設備投資等をして増産を図り,売上を増やし利益を上げる!

残ったのは【答-3】投資せずLead-Time短縮という切り口で業務改革を推進する!となります.これはまさに『本流トヨタ方式』で,弊社のお勧めの道筋です.もしDXを導入して,戦力的に市場で闘うのであれば,必須条件になります.長文になりますので,章を改めてご説明いたします.

7-3. Lead-Time短縮という切り口で業務改革を推進する!
<設備投資はせず,仕事のやり方を変える>

下記の順にご説明いたします.

  • [Step-1] 受注⇔納品のLead-Time短縮で市場競争力確保
  • [Step-2] 検収⇒納品のLead-Time短縮(在庫低減)で体質強化
  • [Step-3] 浮いた経営資源を活用し,更なる成長
[Step-1] 受注⇔納品のLead-Time短縮で市場競争力確保

受注⇔納品のLead-TimeのことをOrder-to-Delivery-Lead-Time(略してODLT)と言います.

  1. 飲食業界は昔から客を待たせない事を競ってきた
    1. 中国の例

      店に入ると客はテーブルの上のQRコードをスマホに読み,出てきたメニュー(写真と説明)から料理を選び,店員に転送すると,砂時計を置きます.時間内に全品届かないと上海では1皿サービスされます.

    2. 日本の例

      『飲み物』と『お通し』で時間稼ぎ

  2. どこの顧客もOrder-to-Delivery-Lead-Time短縮を望んでいる
    1. 見本市では
      • 中国企業

        『電子データを送ってくれれば1週間後に現物を日本に届けます』といった売り込みをかけてきています.

      • 日本企業

        高品質と安さのみを強調……日本のものづくりが心配

    2. ODLTをダントツ短縮したら断り切れないほどの仕事が来た

      筆者の仲間が,Order-to-Delivery-Lead-Timeが3週間と言われる業界で,5稼働日(正味4日間)にまで短縮したところ,客が殺到するようになり,プレミア付けると言う客まで現れ,今では客を断るのに困っている……収益も上々と言う自慢話を聞かされました.

      Order-to-Delivery-Lead-Time短縮が,いかに市場における優位性を発揮するかを改めて知らされた次第です.

    3. 因みにトヨタのSupplierは

      Order-to-Delivery-Lead-Timeが原則0.5日です.

      トヨタの組立工場⇔サプライヤーは『かんばん』でやり取りしており,通称1-4-2 (1日4回納入の2回遅れつまり半日遅れ)という関係で繋がっています.

[Step-2] 短縮したOrder-to-Delivery-Lead-Time維持した上で, 検収⇒納品のLead-Time短縮(在庫低減)で体質強化

ここでは,社内の業務推進体制を『Lead-Time』という概念で捉え,そのタイミングを調整(JIT化)することTotal Lead-Timeを短縮し,(在庫低減)俊敏に動く社内体制に再構築して行く活動になります.

[2-1] Lead-Timeという概念の行う在庫低減例の説明
病院 待合室 診察室 H G F E D C B A

上の図は病院の待合室で,A〜Gの人が診察を待っている状態を表しているとします.また,診察には1人あたり5分かかるものとします.

  1. この状態を『人数で表現』しますと,
    • 待合室にはAからGまで7人が待っている
    • 今来たHは8人目なので,7人が診察を終わるまで待たなければいけない
    となります.
  2. この状態を『所要時間(Lead-Time)で表現』しますと,診察には1人あたり5分かかるので,
    • 待合室にはAからGまで診察時間35分相当の人が居る.
    • 今来たHは30分間待たないと診察を受けられない.
    • Bは5分,Cは10分,Dは15分……待たなければいけない
    と表現できます.

このように,

  1. 『人数で表現』すると,人数を減らす手段が見つかりませんが
  2. 『Lead-Timeで表現』すると,人数を減らすには病院に来る タイミングを工夫すれば良いとわかります.

これを受けて最近の病院では,事前予約が取れるようにしており,患者は病院に来てから帰るまでの時間(Total Lead-Time)は短くて済みますし,病院の駐車場や待合室はガラガラになります.

待合室(a) 原材料倉庫 患者数原材料在庫量
診察室(b) 製造工程 患者数仕掛在庫量
会計待ち(c) 完成品倉庫 患者数完成品在庫量

上のように読み替えれば,[Step2]の改善のヒントになります.

[2-2] 財務諸表から自社の棚卸資産の実態を知る

会社棚卸資産は『貸借対照表(バランスシート)』に記載されています.

前期末の棚卸し時の状況になりますが,

\begin{equation} \text{棚卸資産;} I_{t} [\text{円}] \\ \text{内訳} \\ \text{原材料;} I_{m} [\text{円}] , ~~ \text{仕掛かり;} I_{s} [\text{円}] , ~~ \text{製品;} I_{k} [\text{円}] \\ \text{即ち,} I_{t} = I_{m} + I_{s} + I_{k} [\text{円}] \end{equation}

金額のままでは,どのように減らせば良いか分かりませんので,『損益計算書(PL)』から売上原価$U [\text{円}]$を持ってきて,

\begin{equation} \text{棚卸資産回転数}^{*} = \frac{\text{売上原価}^{*}}{\text{棚卸資産}} = \frac{U}{I_{t}} [\text{回/年}] \end{equation}
\begin{align} \text{Total Lead-Time} &= 12 \text{ヶ月} \times \frac{\text{棚卸資産}}{\text{売上原価}^{*}} \\ &= 12 \text{ヶ月} \times \frac{I_{t}}{U} \\ &= 12 \text{ヶ月} \times (\frac{I_{m}}{U} + \frac{I_{s}}{U} + \frac{I_{k}}{U}) \tag{7-3} \end{align}

[Step2]の課題は,財務諸表上の棚卸資産(単位は[円])を減らす事ですが,先の[2-1]と同じように,時間(ヶ月)で表現すると対策が打てるようになります.

(7-3)式にあるように時間で表現すれば,次のように表現できます.

棚卸資産金額Total Lead-Time
原材料在庫金額原材料 Lead-Time
仕掛かり在庫金額仕掛かり Lead-Time
製品在庫金額製品 Lead-Time

ということは『棚卸金額を半減させる』ことと『在庫リードタイムを半減させる』とが等価であるという意味になります.具体的に言えば,外注先からの納品を10日前に入れさせていたものを,5日前に変更すれば,原材料在庫金額は半減するという事です.

現場では,良かれと思って『早め,早め』に手配し・着工して居ますが,会社のためにも『ギリギリまで遅らせて,速く間に合わせる』が一番の理想と教えるべきです.

[2-3] 同業他社,業界等と比較して,自社の課題を明確にする

このHP のコラム『Jコスト改革の考え方』第6回目より

\begin{align} \text{基礎収益力} & \equiv \frac{\text{売上総利益}}{\text{棚卸資産}} \\ & = \frac{\text{売上総利益}}{\text{売上原価}} \times \frac{\text{売上原価}}{\text{棚卸資産}} \\ & = \text{売上原価粗利率} \times \text{棚卸資産回転数} \\ & = \text{主として本社機能責任} \times \text{主として現場責任} \tag{7-4} \end{align}

この式の 縦軸に売上原価粗利率をとり横軸に棚卸資産回転数を取ったグラフ(下図)を収益性分析図と名付けました.図は業界の違いを表したものです.各社の財務諸表は法律によって公開されていますので,ネットで調べて同業他社の収支分析することが容易です.

さらに同業他社と比べて,原材料在庫が多いのか, 仕掛在庫が多いのか,完成品在庫もいいのか,どこに問題があるのかも調べることができます.他社よりも悪いところを,他社並みに改善するということには現場も燃えますし,比較的容易だと思います.

このように 闇雲に改善するのでは無く, 他社の動向と比べて進める事も有益だと思います.

[2-4] Lead-Time短縮には『小ロット・多回』が特効薬

上図は,ロットサイズと在庫の関係をモデルにした図です.手桶で10個ずつ運ぶためには,Timingのズレも配慮しますと,上流に手桶でとりに行った時に15個くらいにと心配です.届けた先も5個くらいの残っていないと心配です.経験上,ロットサイズがn個であれば,上流・下流・運搬中の合計在庫は最低で3n個必要で,実態は4〜5n個で運用しています.

東西の道路と南北の道路が交差する交差点の信号を考えてみましょう.赤信号がもし1時間続いたとすればどうなるか考えてみて下さい.大渋滞になることでしょう.実際の交差点の信号は最大で2分間とされているそうです.そのお陰で東西も南北も,さしたる渋滞無く流れているのです.これぞ『小ロット・多回の極み』と言って良いでしょう.

[2-5] Lead-Time短縮を阻む組織の壁

日本の会社組織は機能別に縦割り組織になっており,そのトップは,社長の座を窺う専務クラスになって居ます.

(a) 原材料・外注品在庫……購買部門
(b) 仕掛かり在庫……製造部門
(c) 完成品在庫……営業部門

それゆえ[Step-2]の改革にあたってプロジェクト・チームを立ち上げる時,その推進責任者には,(a),(b),(c)の上位にある『会社Top』か『経理』が就任しないと改革が進みません.これが改革推進の『胆』になります.

[2-6] トヨタ系サプライヤーの工夫例

[Step-1]で紹介したOrder-to-Delivery-Lead-Time 0.5日の中でのTotal Lead-Time削減の工夫の幾つかを紹介します.

(6-1) 原則,『在庫後補充生産』

使用量の多い品番は1日4回 生産,極少量品番は月1生産.

(6-2)上記を可能にするのは,トヨタの『平準化生産』があるから!

その裏にはトヨタの『共存共栄』思想.

(7)トヨタはSupplier棚卸資産回転数は……30〜50回.

(在庫を押しつけてはいない)

国際競争力は強く,デンソーの30%余を先頭に,アイシン,自働織機,紡織等はトヨタの約10%を遙かに凌ぐシェアを獲得しています.

[Step-3] Total Lead-Time短縮するとは……

どのようになってるかを実体験を基にした一般論でお話します.

[3-1] モデルの設定

自動車用板金製のホイールキャップをイメージして,@板状ステンレス材料を,Aプレスして,Bバリ取り仕上げをし,C塗装し,D1台分ずつ梱包して,E出荷する……工程を想定

当日も出荷量は,前日に確定.平均A40台,B30台,C20台,D10台バラツキは±10%である……

従来から在庫後補充定方式,1週間単位で生産をした.毎日後補充生産に変更し,在庫を減らした.

以上を前提に,現場がどう変わっていくかのお話をします.

[3-2] 『仕掛かり在庫』減による製造現場変化
『1週間分ずつ生産』

A200台,B150台,……,D50台の連続生産では,完成品在庫は通常必要量の1.5倍〜0.5倍の間で管理していた.

完成品在庫

A300〜100台,……,D75〜25台あるのが普通.

『毎日生産』

朝からA40台,B……,D10台をその日に生産する.完成品在庫は;A60〜20台……,D15〜5台で管理

  1. 小ロット多回生産の効果(課題の顕在化)

    『1週間分ずつ生産』Aは平均200台の完製品在庫持っての2日間 連続生産,設備故障・不良に容易に対応でき,ダラダラとした生産だった.

    『毎日生産』A40台,……,D10台を,時間通り生産が必要!設備故障・品質不良等はすぐ顕在化します.速く直し,再発防止を図る必要に晒される.⇒ 現場には緊張感が走り,キチンと仕事し,再発防止の徹底を図る,理想の職場になって行きます.

  2. 作業完了の在庫が少ない効果(背水の陣効果)
    AプレスBバリ取りC塗装D梱包

    A〜Dまでの工程間にある仕掛り在庫は,仕事を中断されることを嫌がるため,1日分または1ロット分以上の在庫を置いて生産をする という風習があって,この場合 どこにNeckがあって生産の速さが決められているのか分からないまま,ダラダラと生産していました.

    『毎日生産』になりますと,@〜Dまでのどの工程も,A,B,C,Dを1日分ずつでも合計100台分作らなければならなくなります.準備・後始末等の時間を除いた,正味稼働時間を400分とすれば10台を40分間で作っていけば良いことになります.

    トヨタ生産方式には『チョロ引き』と言う改善手法があります.チョロとは下図にある利便性の良い猪牙舟のことです.

    この例では,各工程間を10台分ずつ40分間隔で移動(運搬)させます.

    チョロ引きの導入で運搬工数が増えると思いがちですが,今までは前工程の溜まってきた中間製品を,頃合いを見計らって,一時置き場へ運んでいき,収納します.

    次工程の材料置き場が空くのを見計らって,先に置いた一時置き場からからピッキングして次工程の材料置き場に補充していきます.

    この時の運搬作業を,仕事を探して走り回って居る様を揶揄して『流しのタクシー』と呼びます.

    一方『チョロ引き』は,前工程の完成品置き場から後工程の材料置き場へと一定時間間隔で一筆書きのように廻るので,通称『定期バス』と呼びます.改善マンの間では,『流しのタクシー』から『定期バス』に代えると運搬工数は経験的に1/3に減るとされています.

    各作業工程では,チョロ引きした直後の在庫量で『生産の遅れ進み』が一目でわかるようになります.遅れている工程はみんなで改善したり,進んでいる工程から時々応援したりして,安定した生産ができるようになっていきます.安定したら更に工程間の在庫を減らしていきます.

    このようにして,日々の生産能力向上活動が活発になり,日々が勝った・負けたのゲーム感覚で仕事ができ,長期的には成長が実感できるようになり,会社に行くのが楽しみになります.

    10台分を40分というTACTを発生させる事で,作業にリズム感が出て来て,増えた段取り作業時間を差し引いても,経験的には10〜20%生産性が向上します

  3. 生産の柔軟性向上

    10台当たりの生産時間を把握できていますので,在庫後補充生産により納入量日々の変化や,自工程の設備故障などにも,生産時間の増減で,柔軟に対応することができます.

  4. 工程間在庫スペースが不要に

    普通,この改善をすると,工場がガラガラになり,設備を間締めすると通常半分のスペースが有効活用できる空き地に変わります.

[3-3] 『毎日生産』による外注品倉庫の変化

1週間分ずつのまとめ生産であった為,外注品(原材料)は1週間分の一括注文になり,物流費もまとめた方が安くなるので前の週の内に一括納入となっていて,検収作業や検品作業,それを倉庫に収納作業で,納入日は丸1日てんてこ舞いだったが,残りの4日間は,倉庫から製造現場への供給のみの仕事になり,暇だったのでした.

『毎日生産』では,A,B,C,Dほぼ毎日,在庫後補充という形でほぼ一定量が納入されます.品質の抜取検査だけで, その日のうちに使い,過不足が判明しますから 受入時の員数検査の必要はありません.

  1. 受入即・製造工程へ供給

    受け入れた外注品は,約100台分なので,トラックから荷卸しするついでに指定の場所に平置きするだけでOK.後からチョロ引きが,そこからラインに供給します.

  2. 受入時刻管理

    等間隔で 納入することで,安全在庫を縮小できます.仕入れ先毎に毎日指定時刻に受け入れることで,トラックの混雑緩和のみならず,自社の社員は,他の仕事と掛け持ちが可能になります.

  3. 保管倉庫廃止

    以上のような変化により,外注品用のラックビル,収納・Picking作業倉庫そのものが不要になります.

[3-4] 『毎日生産』による出荷準備場の変化

従来は,製造工程で完成した大ロットの製品を 1旦 完成品ラックビルに収納し,その後 出荷指示に合わせてピッキングし,出荷準備場に並べておくと言う手順でした.

『毎日生産』になると,『出荷荷揃え場』『当日用』『翌日用』『翌々日用』と3カ所決めて置いて,次々とでき上がってくる,A,B,C,Dの完成品を,出荷指示に従って荷揃え場に置いていく作業になります.

  1. 完成品ラックビルは全く不要になります.その空間も不要になります.
  2. 当然ラックビルへの出し入れが無くなるので運搬作業量は1/3以下になります.
  3. 出荷時刻を決め,厳密に守らせる事で,全体の進捗管理が可能になります.ここを押さえれば,工程内の仕掛かり在庫を更に削減していけます.
[3-5] 『週次ロット』から『毎日生産』に改善した効果総括
  • 【在庫低減】 21.5日分⇒6.0日分 15.5日分減
    原材料在庫10〜5日分2〜1日分……△6.0日分
    仕掛り在庫工程上;0.5日分×4変わらず
    工程間;1.5日分×340分×3×3カ所……△3.5日分
    完成品在庫*10〜5日分2〜1日分……△6.0日分
  • 【工数低減】
    運搬作業受入・出庫,工場内,出荷場で各1/3に低減
    製造工程顕在化されたNeck工程の改善で2割向上
    段替え増の工数は不明
  • 【工場スペース】

    原材料在庫(6.0日分),仕掛在庫(3.5日分),完成品在庫(6.0日分)が,ラックビルとともに不要になる

上記のように浮いてきた『経営資源』をOrder-to-Delivery-Lead-Time削減で新規獲得したら,顧客に向けての増産に使うも良いでしょう!製品寿命を考えている 次のモデルの生産準備をするのも良いでしょう.

ここでご説明した改革は,設備投資は一切行わず,知恵とやる気で,達成可能です.

Withコロナの時代にやるべきAfterコロナに向けての改革の1例としてご紹介しました.この改革はまた政府が推し進めようとしているデジタル改革の対応でもあります.ご参考になれば幸いです.


次回は,改革を押し進めるための『経営者と管理者と監督者の役割分担』について考えてみたいと思います.


2021年1月
(株)Jコスト研究所 代表 田中正知