株式会社 Jコスト研究所

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連載コラム『Jコスト改革の考え方』目次

JBpress連載コラム『本流トヨタ方式』

ビジネス情報サイトJBpressにおいて、2008年から2013年までの間に合計104回のコラム 『本流トヨタ方式』 を連載していました。

現在連載中のコラム 『Jコスト改革の考え方』と併せて読んで頂くと、より深くJコストの考え方がご理解頂けるかと思います。是非、下記のリンクにアクセスしてみて下さい。

JBpress連載コラム『本流トヨタ方式』

過去の所信表明





2025年2月

所長の季節のご挨拶

心配していました『トランプU』は,大統領選で称えた公約の手前,関税を発表しましたが,具体的には実害を最小限に留める内容のようです.『石破vsトランプ会談』も実現しました.少し安堵しています.

この冬一番の寒波が来てる中,その寒さの中で昨日,拙宅の小さな菜園で『菜花』が見つかりました.

青菜は日照時間の変化を読み,菜の花の開花の準備を始めています.この開花に合わせて蝶が蛹から羽化して現れ,花の蜜を吸いながら受粉を助け,葉っぱに卵を産み付けます.産み付けられた卵は孵化して青虫になり次の植物の葉っぱを食べて成長し蛹を経て蝶になることを,春から秋にかけて4〜5回繰り返して蛹で越冬します.一方菜の花は受粉出来たお陰で菜種を実らせ,地中に蒔いて生涯を終えます.

誰が仕組んだかは知りませんが,寿命が1年未満のこの蝶と青菜の2種類の生命体の織りなす現象は,毎年毎年正確に繰り返され,実にめでたいことです.

人間世界では,1月28日に埼玉県八潮市で道路が陥没し,そこにトラックが落下した事故が起きました.関係部署の懸命な努力にもかかわらず,未だに運転席の救出ができずにいます.マスコミではそれを毎日放送していますが,『何故このような事故が起きたのか』『諸外国ではこのようなことは起きているのか』『再発を防ぐにはどうすべきか』と言った建設的な……行政を見直すような報道はなく,『大変だ』『可哀想』『住民の困惑』のみを伝えております.これでは文字通り『埒が開きません』

4半世紀前になりますが,現役の管理職であった頃は,様々な体験をしてきました.TOYOTAの社内では,問題が発見されると必ず『何故・ナゼ・なぜ・Why……』と,その原因を遡り『真因』を徹底的に追求し,その『真因』に対して再発を防ぐための『本対策』考え,実施しておりました.

通常『本対策』は時間が掛かるので,実現するまでの間は,『暫定対策』を行います.

現場に任せ切りにすると,忙しい現場は日常業務に追われ,『暫定対策のレベルでも良いのではないか……』と易きに移り,多くの場合本対策には届きません.そうしている内に『再発』させてしまうのが常です.責任者が強い意志を持って『決めたことを成し遂げていく事』が大事なのです.責任者というのはそのためにいるのです.

よく『安全第一』とか『品質第一』と言われますが,『安全』『品質』は数値化が難しいので,具体的なレベルは経営Topが決めなければいけない」という意味が込められています.

付け加えますと,決めただけでは駄目で,『安全』『品質』の具体的レベルは,トップ自らがある頻度で確認する必要があります.業務監査という行事はその一つです.

因みに今のTOYOTAの車両品質は,章男会長が自ら『マスタードライバー』の任に就き,自社の試作車を自ら運転し,品質と安全を確認して『GO!』サインを出し,時には抜き取り検査的に自社製品に乗っている……と言います.それ故,普段はレクサスやクラウンのような高級車に乗っていては評価の軸が崩れるとして,他社製の軽四や大衆車にも乗って,今の市場の動向を掴んだ上で,自社製品を評価していると聞いています.TOYOTAの哲学『現地現物』の極みと言えます.

このような『トヨタ流ものの見方・考え方』から今回の道路陥没事故を,『そもそも論』から考えて見ましょう.

各家庭には一般的には下記のように8種類のライフラインが接続されています.

  1. *電線 (100V,200V)
  2. *通信線 (光ファイバー)
  3. ガス管 (燃料用都市ガス,プロパンガス)
  4. 上水道管 (飲料水)
  5. 下水道管 (生活排水,汚水)
  6. 雨水管 (雨水)
  7. *電話線 (銅線)
  8. *その他 (ケーブルテレビ等)

各々の所轄官庁が違うこともあり,各ライフラインが個別に国交省管轄の道路に許可を受け,各々が勝手に埋設しています.

*印は電柱等を経て空中で分配している場合が多いのですが,10年前まで住んでいた駒込駅付近では写真のようになっていました.

右側の写真は,電線・電話線・光ファイバー線が入り乱れて居る状況の例,家が建ったり,新規設備を導入したりするたびに請け負った業者がそれぞれの方法で配線したために,このような複雑な形になってるのだと思います.

もし地震で電柱が倒れたら,どのような手順でどのように配線していったらいいのか誰も説明できない状態になっているのだと思われます.

左側の写真は,民家の頭上に6,600Vの高圧送電線と,110V家庭用送電線が張り巡らされていて,細い電柱の上の大きな変圧器で6,600Vから110Vに降圧している状態を撮影したものです.

地震で電柱が倒れて民家の上に覆いかぶさると,この変圧器が民家に落下することになります.変圧器の重さと6,600Vの送電線が,住民の上に覆い被さりますから,タダで済むはずがありません.想像するだけで恐ろしくなります.

それで私は10年前名古屋市の丘陵地帯の現住所に引っ越しました.

これらライフラインは,諸外国ではどうなっているのでしょうか?

米国,西洋諸国には電柱が無いのは常識です.中国は北京・上海は大都会だから電柱は無いと予想できますが,地方都市はどうかとお思いでしょう?

次の写真は,2024年6月の河南省新郷市の風景です.写真に写っている2輪車,3輪車,小型の4輪車は,ポンコツ再生の鉛バッテリー式のEVです.いわゆるゴルフカートで,安くて通勤用には便利なので,都市交通の庶民の足になって居ます.

中国のEVの躍進が話題になっていますが,その原点は,これらのゴルフカートまがいの小型車にあると思います.

話を道路に戻しますと,車はゴミゴミしていますが,道路はすっきりしています.電柱は一切ありません.道路環境は欧米先進国と同じです.東京とは違います.

下図は横浜市のHPからの引用ですが,左が現状の電柱と『個別地中埋設型』のライフラインを,右側は道路に大きなトンネル『共同溝』を設け,その中に各ライフライン(1)〜(8)を整然と並べ,常時点検と修理できるようにしたものです.

共同溝のイメージ (横浜市HPより引用)

共同溝には,道路両側の雨水溝を大きくして活用するタイプもあり,現場の状況によって様々なバリエーションがあるようです.

従来の『個別埋設方式』は,3月末日の年度末にあわせて,個別のライフラインが点検周期毎に道路を掘り返し,埋め戻しております.(1)〜(8)のライフラインは監督官庁が違うので協力体制が組みにくく,共同溝方式が望ましいことは分かっていても,船頭が多くて未だ一部地域しか実現してないようです.

毎年,『国土強靱化予算』が総額で5兆円ほど計上されています.てっきりライフラインの共同溝化が大きな柱になっていると思いましたが,調べてみますと,議員さんが地元の要求で勝ち取る予算のことのようで,肝心のライフラインの共同溝化は入っていませんでした.

東南海地震,首都直下型地震等々が迫ってきているという中で,今年もあちこちの道路を掘り起こし,ライフラインの点検修理を行っています.平均寿命が80歳を超えた日本の社会で,菜の花と蝶のように毎年同じ事の繰り返しでは能がありません.日本も諸外国のように,ライフラインの共同溝化に向けて歩み出すときと思います.

マスコミは,本来の『ジャーナリズム魂』を呼び起こし,道路陥没事故を,『日本国の国土強靱化のメインテーマの一つ』として取り上げ,国家として何時までに,何処まで共同溝化していくか』をフォローしてほしいものです.

2024年度の訪日観光客は3千万人を超えるとか……と言う事は,林立する電柱と,蜘蛛の巣のような電線,毎年掘り起こす道路を,珍しい景色として彼等に自慢して見せるのか,恥ずかしいこととして一刻も早く直すのか,その決断を世界が見ていると考えなければなりません.

次回は,バブル時代に論争になった『浄化槽方式』『広域下水同方式』の違いを『本流トヨタ方式』で論じます.

最後に,不明になっている運転席の一刻も早い回収を念じております.


2025年2月吉日
(株)Jコスト研究所 代表 田中正知



2025年1月

2025年 所長の年頭ご挨拶

皆様 あけましておめでとうございます.

OneDriveにメモリーをかき回され対応に多忙を極め,年始のご挨拶が遅れてしまいました.まずお詫び申し上げます.

昨年の年頭挨拶で下記の【A】〜【E】までをお話ししました.

  • 【A】昨年から始まったウクライナ戦争,ロシアが勝利する?
  • 【B】今起きているイスラエルのガザ攻撃で世界が変わった
  • 【C】異常気象が急速に拡大している事実
  • 【D】世界人口の爆発
  • 【E】『異常気象』と『世界人口の増加』と『宗教』の関係

『異常気象』は人為的に作り出されたと言う風潮ですが,1万年前の氷河期では人類はマンモス狩りをし,数千年前の温暖な縄文時代の三内丸山遺跡では,海面は現在よりも19m高かった(縄文海進)と言います.これは厳然たる事実です.そもそも,46億年の地球の歴史を見たとき,高温で植物が繁茂した時代もあれば,地表が氷で覆われる氷河期を繰り返しています.その激変の中で,30億年前単細胞だった『生命』は自らを進化させることで生き延び,今日に至っているのです.

一方,ヒトに着目しますと,直接の祖先は約20年万年前にアフリカに誕生したと言われ,その後全世界に広がり,近場で言えば1950年25億人だったものが,2000年では61億人,2024年では80億人を突破し,今なお増加しています.地球上の人口急増こそが,すべての根底にある問題点で,なおかつ地球上の人類自身の手で解決できる問題なのです.

ところが,『妊娠は神の意志』と信じる一神教信者が全人口の6割を超えていて,当面は解決しない問題であろうと想像がつきます.そうであれば,この厳しい状況の中で我が社だけでも,我が地方だけでも救うことができる,ノアの方舟ならぬ小舟というものを考えてみたい……と話をしました.

2024年元旦に能登大地震が発生,防災体制の不備が一挙に露呈しました.と言うのは,29年前の1995年田中は物流管理部長の職あって体験した,『阪神淡路大震災』と,全く同じ事が繰り返されていたのです.この驚きと怒りで田中にとって『ノアの小舟』どころではなくなったのでした.

1995年阪神淡路大震災で田中が体験した事を以下申し上げます.

火災現場に向かう消防車が,道路に落下した障害物で進行を妨げられ場合,その道路の両側は私有地なので,道路を開けるために障害物をその私有地にずらすことも,障害物を避けるために私有地にはみ出して運転することも禁止されていました.消防車や救急車は,道路のみで行ける道を懸命に探しながら救援にあたってました.

29年経った後の今回の能登でも全く同じで,不通箇所の開通には,両側の私有地に乗り入れができないことがNeckとなったようです.また,公団道路・国道・県道・市町村道・林道・農道・港湾道路と管理者が違い,更に道路信号は公安委員会と8機関に分かれていて合意が無いと新しい救援ルートは開通できないのです.

一方で,30年前トヨタの中はどのような対応をしていたかというと,震災発生の当日,『現場改善指導』の為に出張していた主査から,神戸『富士通テン』のラジオ,大坂『住友電工』の配線の生産ラインが,壊滅的被害を受けている旨の報告が,生産担当副社長のところに入りました.

副社長は直ちに対策本部を立ち上げ,事務局を生産管理部長に任命しました.事務局からトヨタ系の全工場に向けて,直ちに全生産ラインを停め,棚卸を実施し,本部に報告させました.ここにトヨタ生産方式の本領が発揮されるわけですが,細部は後日報告しますが,とりあえず一週間の全ライン停止が決定されました.

この,異常があったら直ちに生産ラインを止め,実態を把握し原因を対策しあと,ラインを再稼働する……というのがトヨタの大鉄則で,これが実施されたのでした.

ラインを止めることによって,日頃できなかった安全教育や技能訓練,設備改造等々が出来るのです.トヨタの管理会計制度としては,他責によるライン停止は自工程の製造工数には計上されませんので,現場の管理者としては『無料で現場の工数を使い』自職場の運営体制の補強が実現できるわけですから,願ってもないチャンスなのです.

この辺のトヨタ独自のやり方については,今年から始める新シリーズ『TOYOTAとNISSANの歴史をJコスト論で斬る』で詳しく説明していく予定でいます.

話を阪神淡路大震災に戻しますと,トヨタの全工場が1週間停止することになれば,物流管理部の管轄している3隻のRORO船が暇になります.当局から許可をいただいている航路は,豊橋港⇔名古屋港⇔博多港ですが,『救援物資を乗せたトラックを神戸港までお届けしましょうか』と当局に提案しましたところ,新しい港への寄港申請は二ヶ月前に届け出ることと言って断られてしまいました.

これと対照となるのが米国政府の動きです.日本から米国に向けて完成車を輸出するために特殊な形状の自動車運搬船を多数使っていますが,ある日米国政府からの申し出があって,有事の際,米国の軍事物資を運ぶ契約を結んでくれれば,日常の航行に関して米国軍部からなにがしかの補助金を出すという提案がありました.有事というものに対する発想の違いをひしひしと感じたのでした.

小型漁船は,陸揚げして船底塗装し直せるように出来ていますので,岸壁が破損しても砂浜であれば容易に荷卸しが出来ますが,管轄が水産庁ですので水産物しか運べません.一般貨物を運ぶためには,陸運局の事前の許可を得る必要があります.これが救援を遅らせた一因と思うと残念です.

部長の役職定年者四名で漁船を買い,毎週のように三河湾で釣りをしていた頃

災害は,能登半島のあと,東南海地震,東京直下型地震,富士山の爆発等,かなりの確率で予想され,石破内閣が『防災庁』を設置するとか言われています.期待して見守っています.

12月になって,突然天下のNISSANがHONDAの軍門に降ると受け取れるような発表がありました.田中がトヨタ内で改革をすすめる折りも,NISSANを意識し,ものつくり大学教授として教鞭を執るときも,トヨタ生産方式のアンチテーゼとしてNISSAN生産方式を挙げ,2004年から2023年までの東大MMRCでも,トヨタとNISSANを対比して論じてきました.田中にとって重大な研究テーマでもあったわけです.

それで2025年は,連載講座として『TOYOTAとNISSANの歴史をJコスト論で斬る』をテーマにしていきたいと考えています.どうぞご期待ください.


2025年1月吉日
(株)Jコスト研究所 代表 田中正知



2024年1月

2024年 所長の年頭ご挨拶

皆様 明けましておめでとうございます.

長期低迷を打破するために,官民挙げて物価上昇を超える賃上げの必要性が謳われ,年末の株価は34年振りの高値を付け,2024年度の成長を予感させています.

どうやら永年続いた異次元の金融緩和の呪縛から外れ,金利のある世界へ戻ろうとしている実感があります.経営体質の変革を成し遂げた会社に取っては,希望に満ちた新年でしょう.旧態然のまま,金利と賃金の上昇を迎える会社との差が益々大きくなりつつあります.

貴社は当然,なすべき社内改革をやり遂げ,次なる高みを目指して龍の如く駆け上がる準備は完了していると思います.益々の御発展を祈るばかりです.


日本は農業国で,豊かな自然に恵まれ,春夏秋冬季節の変化がハッキリしており,時には地震や噴火,台風,干魃もありますがすぐに平常に戻っていました.

そこで日本には『明けない夜はない』とか,『待てば海路の日和あり』といった諺が大手を振って闊歩していて,災害に遭っても壊れた部分を修理さえしておけば,後はかっての日常に戻ることが出来る……という潜在意識が強いのも事実です.

1990年以降の日本の長期凋落の原因はそこにあるという指摘もあります.

弊社は弊社なりに世界情勢を俯瞰して洞察を重ねた結論として,『ガザ空爆攻撃以降,世界は『未知の・経済大混乱』に向けて突入し始めた』という結論に達しました.

以下その理由【A】,【B】,【C】,【D】,【E】を申し述べます.

【A】昨年から始まったウクライナ戦争,ロシアが勝利する?

世界の世論は『正義は勝つ』と信じ,ロシアがウクライナから撤退すると考えてきましたが,米国・EUの支援疲れで,いずれウクライナはロシア領になる公算が大きくなりました.その戦果として黒海の制海権・ウクライナの農業・工業を手中に収める.その勢いでモルドバ・ルーマニア・ブルガリア・ハンガリーを勢力圏に組み込む.そして,全世界を『エネリギーと食料を餌にして人口増で悩むこの地球を支配していく…….プーチンが大統領に再選されその任期2030年までにその形ができていく……というシナリオが現実味を帯びてきました.

【B】今起きているイスラエルのガザ攻撃で世界が変わった

この攻撃では既に2万人余の子供を含めた一般市民を犠牲にしているとされ,その映像が全世界に配信されています.1970年代の第T次中東戦争では,石油ショックを引き起こし,世界経済に激震が走りました.今回のガザ攻撃は,イスラエルのパレスチナ殲滅作戦ではとも受け止められ,パレスチナと同じ宗教である全世界のイスラム教徒(世界人口の23%)の強い反感を買っています.

一方,ユダヤ人1400万人の内イスラエルに630万人,米国に570万人居るとされていますが,彼等は米国の政界に食い入り強い影響力を発揮しているとされています.一方,旧約聖書(ユダヤ教の聖書)と新約聖書を信仰の源とする米国福音派は,全米の25%を占める巨大組織で,ユダヤ教と近しい関係にあるとされ,この関係が,国連安全保障理事会で,停戦案にひとり米国のみが拒否権発動となったと言われます.

このような背後関係で,ガザ攻撃が続くほど,世界のLeaderとして君臨してきた米国の権威が失墜していく事になるのです.言い換えれば,日本経済が恩恵を受けてきた米国の自由主義経済圏の勢力が衰え,中国のような権威主義経済圏が力を増して来るという事です.

【C】異常気象が急速に拡大している事実

マスコミでは『地球温暖化が進んでいる,阻止する為には炭酸ガスの排出を○○まで減らさなければいけない』という単純な話になっていますが,これは世界の金融機関が投資を引き出すための戦略であると考えた方が良く,地球の気象というのはそんな生易しいものではありません.

メートル法は地球の北極から赤道までの距離を1万kmとして導かれて居ますから,1周4万km,従って地球の半径は6,366kmとなります.一方,地球を取り巻く大気の厚みは地表から100kmとされています.しかし地表から約10kmまでが,地表の蒸気で雲ができたり,それが雨になったり雪になったりするいわゆる『対流圏』で,その上空には『地表の天候』には余り関与しない成層圏があります.

地球の天候とは半径6,366kmの地球,表面が8,000mを越えるヒマラヤ山脈や,4,000越の南極大陸の山,巨大な太平洋とその沿岸にそそり立つロッキー山脈やアンデス山脈等々で,流れを妨げられながら,地表から10kmの厚みの空気が地表の回転と共に半日は太陽の光を受けながら,どのような挙動をするかが,その複雑な空気の流れを解明するのが『地球気象学』です.

数多くのスーパーコンピューターを組み合わせることによって地球全体の気象変化をシュミレーションできると信じながら世界中の科学者が挑戦していて,そのコンピューターのことを『地球シミュレーター』と呼んでいます.

残念ながら,未だに解き明かしたという情報は聞いておりせん.例えばアマゾンの熱帯雨林百ヘクタールを牧畜業の草原に変えたとします.その土地から発する熱量・水分量・空気抵抗等が変わります.この変化は全地球の厚さ10kmの対流圏内の今までの空気の流れそのものを変えてしまいます.今年,霧雨しか降らなかったイギリスに豪雨があり,鉄道のトンネルが水没したとか,オーストラリやの草原が大洪水で湖と化し,カンガルーが溺死した等のニュースが飛び込んできますが,現在の地球シミュレーターでは何が原因かを特定できるところまで行っていないので,野放しになって居るのが現状です.やったモノ勝ちで,森林破壊は毎日進行しています.

【D】世界人口の爆発

『ヒトはこうして増えてきた−20万年の人口変遷史』(大塚隆太郎/新潮社)をもとに,田中の知見を加え,更に主な宗教の教祖の年代を加味しますと新しい発見があります.

  1. ヒトが誕生の地アフリカ大陸から世界に旅だった1万年前頃は,マンモスが闊歩する氷河期で,狩猟採取生活の限界近く,世界人口は高々800万人だったと推定される.
  2. やがて地球はドンドン温暖化し,現代より高い気温になり,海面は上昇してきて(日本では縄文海進として,その海岸線は把握されて居る).ヒトは定住するようになり,浜辺で漁労採取が始まり,内陸部では農耕が始まりました.約5千年前に大河の河畔にエジプト・メソポタミア・インダス・中国の古代文明が誕生します.推定世界人口は約1千万人とされています.
    ちなみに紀元前17世紀,遊牧民であったユダヤ人の族長アブラハムが,『神』の声を伝える形で『ユダヤ教』が始まりました.やがてその教えは『モーゼの十戒を守れば神から守られた民になる』という選民思想になり,他の宗教から疎まれる存在になって行くのでした.
    それから約千年後の紀元前6世紀にインドシャカ族の王子が仏教を始めました.王子であるから何一つ不自由しないはずなのに,ヒトには誰も『愛する人を失うなど8つの苦しみがある』として,それを乗り越えていく方法を説いたのでした.
  3. 今から約2千年前,ローマ帝国が隆盛を極め,シーザーやクレオパトラが活躍した時代(BC30年頃)からキリスト処刑(AD30年頃)の頃の世界人口は約3億人と言われています.
    ユダヤ教では,やがて神の使いである救世主があらわれ,救ってくれると信じられてきましたが,ユダヤ教徒であるキリストが,自らを神の子と称しながら,新しい解釈を広めていったので,怒ったユダヤ教徒が,ローマに対する反逆罪で告発し,ローマ政府に磔の刑をさせたとされ,弟子達がキリストの新しい解釈を集め『新約聖書』とし,キリスト教として広めました.キリスト教徒に中では,死に追い遣ったユダヤ教に反感を持つ人も多いといいます.
  4. その後,天候不順が引き金とされていますが民族の大移動が顕著になります.これによりローマ帝国は東西に分裂し,東ローマ帝国が欧州のLeader Shipを握ります.この頃,マホメットによりイスラム教が開始されます.中国には巨大な国際国家『唐』が台頭します.世界人口は横ばいだったとされています.
  5. 中世になると,鉄製の農機具が普及し,農業も進歩し多くの人を養えるようになっていきます.その一方でペストが流行ったり,数多くの戦争を行われるようになり,世界人口は穏やかな成長といったところでした.
  6. 16世紀になると,米大陸の発見,トマト・ポテト・トウモロコシ等が新大陸からもたらされ,食料として直接口に入れるもの,家畜の飼料として活用し,乳製品や肉類として食するものなどヨーロッパにおいては食生活に大変革をもたらしました.そしてその文化は全世界に広がっていきました.新天地を求めて米大陸に移住するものを増え,世界の人口は順調に増えてきました.18世紀中頃で推定人口7.2億人とされています.
  7. 産業革命が起こり,家内制工業が工場制工業になり,労働生産性は飛躍的に伸びました.1914年から始まった第一次世界大戦で,男性が戦場に取られる中,残された女性だけで武器弾薬を含む生産現場を守ったことから,女性の産業界進出が進み,産業構造が一変しました.大戦後,『ロシア帝国』が革命でソビエト連邦になり,『ドイツ帝国』『トルコ帝国』『オーストリー・ハンガリー帝国』は解体し数多くの共和国になりました.第T次世界大戦の戦場に武器弾薬を売り付けた米国は巨万の富を手に入れ,驚異的な発展を遂げ,世界経済の中心に躍り出ることになります.
    1939年から始まった第U次世界大戦では,戦場は欧州大陸,イギリス,アフリカの植民地,アジアの植民地,太平洋の植民地等全世界に拡大され,日本本土も焼け野原になりました.戦争による死者数は5千万人とも言われます.1950年は第U次世界大戦の戦後処理が終わった時期でもありますが,この時の世界人口は25億人で,国連加盟数は60カ国でした.
  8. 世界人口が倍の50億人に達したのは1987年で,この年までの旧植民地が次々と独立し,連加盟国数は159カ国でした.言い換えれば欧米の植民地支配で抑えられてきた国力が,独立することによって解き放たれ,一気に人口増加に繋がったともいえます.
  9. 2022年11月世界の人口は80億人を超えました.その一方で,健康的な食事に手が届かない人々の数は2020年で約31億人に達すると言います.

【E】『異常気象』と『世界人口の増加』と『宗教』の関係

誰も触れたがらぬ『人口増』と異常気象の関係についてお話ししましょう.

野生動物は同じ場所に長時間滞在すると天敵に狙われやすいので,草原では大きく育った草を要領よく食べて,次の餌場に移っていきます.だから草原と草食動物は共存共栄できるのです.

一方家畜は,移動が制限された中での食事ですので,根こそぎ食べてしまい,豊かな草原は不毛の砂漠と化してしまいます.砂漠が拡大すると天候そのものがわってしまい,雨が降らなくなり,ますます砂漠化がんでいきます.これが今アフリカ大陸で起きている砂漠化の現象です.人口増が原因です.


次に,宗教と人口増の関係を調べてみましょう.以下の文章は旧約聖書の創世記の一部をネットから引用したものです.

神はノアとその息子たちを祝福して言われた.

「産めよ,増えよ,地に満ちよ.あらゆる地の獣,あらゆる空の鳥,あらゆる地を這うもの,あらゆる海の魚はあなたがたを恐れ,おののき,あなたがたの手に委ねられる.命のある動き回るものはすべて,あなたがたの食物となる.あなたがたに与えた青草と同じように,私はこれらすべてをあなたがたに与えた.ただ,肉はその命である血と一緒に食べてはならない.また,私はあなたがたの命である血が流された場合,その血の償いを求める.あらゆる獣に償いを求める.人に,その兄弟に,命の償いを求める.人の血を流す者は人によってその血を流される.神は人を神のかたちに造られたからである.あなたがたは,産めよ,増えよ.地に群がり,地に増えよ.」

神はノアと,彼と共にいる息子たちに言われた.

「私は今,あなたがたと,その後に続く子孫と契約を立てる.また,あなたがたと共にいるすべての生き物,すなわち,あなたがたと共にいる鳥,家畜,地のすべての獣と契約を立てる.箱舟を出たすべてのもの,地のすべての獣とである.私はあなたがたと契約を立てる.すべての肉なるものが大洪水によって滅ぼされることはもはやない.洪水が地を滅ぼすことはもはやない.」

さらに神は言われた.「あなたがた,および,あなたがたと共にいるすべての生き物と,代々とこしえに私が立てる契約のしるしはこれである.私は雲の中に私の虹を置いた.これが私と地との契約のしるしとなる.私が地の上に雲を起こすとき,雲に虹が現れる.その時,私は,あなたがたと,またすべての肉なる生き物と立てた契約を思い起こす.大洪水がすべての肉なるものを滅ぼすことはもはやない.雲に虹が現れるとき,私はそれを見て,神と地上のすべての肉なるあらゆる生き物との永遠の契約を思い起こす.」神はノアに言われた.「これが,私と地上のすべての肉なるものとの間に立てた契約のしるしである.」


(創世記 9:1-17)『聖書 聖書協会共同訳』より引用

この言葉にあるように,一神教では神はヒトを創り,ヒトのために大自然を創ったとなります.だからヒトは大自然を思う存分活用してよい,生き物は殺して喰ってよい,という解釈になります.

『産めよ 増やせよ 地に満ちよ』というのは,神の命で夫婦は子づくりに努めなければならない.妊娠するか否かは神の意志であり,人間が介在してはいけない……とう事を意味し,ユダヤ教,キリスト教,イスラム教共に避妊は禁じられています.米国の人工妊娠中絶反対運動はここから来ています.ちなみにイスラエルの女性の出生率は2.90人/人で,先進国ではTOP(カナダ1.4,米1.64)になっています.

『私はあなたがたの命である血が流された場合,その血の償いを求める.あらゆる獣に償いを求める.人に,その兄弟に,命の償いを求める.人の血を流す者は,によってその血を流される.神は人を神のかたちに造られたからである.』というのは,『神は自分の姿に似せてヒトを創った,そのヒトの血を流させた相手は,獣だろうが,人だろうがその兄弟を含め命の償いを求める』と理解出来,ハマスの攻撃を受けたイスラエルが,パレスチナ人の子どもや市民を2万人余殺害しても平然と攻撃をやめずに居る,その根拠はこの聖書の言葉に従っているからだ,と理解出来ます.


【A】,【B】,【C】,【D】,裏側に【E】で述べた一神教があり,その一神教の信者は地球人口80億人の55%にも達しています.肝心の『国際連合』は何の力を持たない事が分かった現在,我々民間企業は,これから益々激しくなる『異常気象』と,『人口増』による『飢餓,国境紛争,大量の難民』という嵐をどう生き延びるか……がこれからの課題になります.

旧約聖書によれば,神の啓示によってノアは巨大な方舟を造り,その中に残すべき大切なモノを積み込んで洪水を乗り切り,子孫を増やしたとありますが,我々世俗人ができるのは,自社のみを洪水から守る,『小舟』しかできません.


次回は来る混迷を乗り切る為の方策『ノアの小舟』について考えましょう.


2024年1月吉日
(株)Jコスト研究所 代表 田中正知



2023年1月

2023年 所長の年頭ご挨拶

あけましておめでとうございます.

世界が大きく揺れ動くことが予想される2023年,日本経済もその大混乱に巻き込まれる事は間違いありません.

旧態然の形のまま沈んでいく会社が多数あるでしょう.その一方で,激動の波に乗り急成長する会社もある事でしょう.貴社が後者である事を祈るばかりです.

[1] 昨年を振り返る

2022年5月,このコラムでこれからの日本経済に以下の【A】,【B】,【C】,【D】の大変化の大波が押し寄せると書きました.今年の年初で振り返りますと

  1. コロナ禍による生活環境の変容
    サービス業,アパレル業界は大打撃を受けました.
  2. 急激な経済回復に伴うインフレ懸念と,それに伴う金利上昇,円安
    世界中で金利が上がり,日本のみ据え置きのゼロ金利の為,恐れていたように一時期150円台まで円安になり,年末に130円台まで戻しましたが,赤字国債1066兆円の内536兆円日銀が保有している…と言う事は,536兆円余分にお札を印刷した事と同じで,江戸時代の小判の改鋳と同じで,やがて世界市場における『円』の価値を下げる事になります.2023年度又150円台になってもおかしくありません.心配です.
  3. ロシアによるウクライナ侵攻
    食料とエネルギー源の供給源で価格高騰…ヨーロッパは直撃しましたが,日本にも遅れて大きな影響が打ち寄せはじめました.
  4. 中国のゼロコロナ政策によるロックダウン
    心配していた通り,12月まで中国はゼロコロナ政策を推し進め,工場封鎖,コンテナ船の大渋滞を引き起こし,世界のSupply-Chainを毀損しました.結果として,iPhoneやテスラを始め,多くの製品が減産を余儀なくされ,水面下では中国離れが進行しているとされています.12月に入り,中国政府は『コロナ対策・ゼロ』に方針変更,現在人口の半数が感染しているとか言う話が伝わっていますが,市民の活気は戻ったようです.活気は戻っても,ゼロコロナで 懐具合が悪くなった 一般市民にとっては,不動産に投資する余裕は無く,不動産バブル の崩壊が噂に登り始めました.もしバブルの崩壊がはじまれば,その影響は全世界に伝播することでしょう….

総括すれば,2022年は5月にこのコラムで予想したように悪い結果で暮れました.皆様の会社の状況はいかがでしょうか?

そして皆様の取り組まれた社内改革は,昨年度は順調にお進みでしょうか?

[2] 2023年度はどうするべきか

昨年後半,いくつかの会場で多くの会社の改善事例発表を拝見する機会がありました.弊社の立場で評論すれば,新商品の開発については各社それぞれご苦労されていて,その企画が成功することを祈るばかりです.

その新商品のSupply-Chain即ち構成部品の調達・生産・在庫管理・物流計画等につきましては,取り組みの甘さが気になりました.

2023年度,全世界企業の改善テーマの一つは,従来の世界の工場とされた中国にべったり依存していたSupply-Chainを,いわゆる地産地消型…消費地の近いところで生産し危険分散を図る事があります.

日本国内を活躍の場としている企業においても,購入品は,極力日本国内のSupplierから調達し,日本国内工場で生産することへの転換が必要だ,と言う事です.

その理由は,以下のような事実に基づいています.

  1. 世界各国の政治・経済体制が非常に不安定になって居てその地政学的リスクから逃れるため
  2. 全世界規模で,船腹数が不足し,運賃,Lead-Timeが不安定化していること
  3. 『Jコスト論』から見ると,輸出入に伴うLead-Timeが長く,結果としてSupply-Chain上の在庫が,運転資金の負担になり尚かつ,市場の変化に追従することの妨げになって居る事等にあります.

[2-1] SCMにどう取り組むべきか

長年にわたって弊社ホームページのコラム『Jコスト改革の考え方』『所信表明』で詳しく述べているので,此処では要点を箇条書きで説明します.

2-1-1 改革の目的を明らかにする

お客様にお買い上げいただいて初めて利益が上がり,会社が存続できる…従って
『市場で他社製品を押しのけ自社製品を選んでもらう事』
が改善の目的になります.

水平展開の進んだ現代社会においては,構成部品はどの会社でも市場から入手できます.従業員の賃金も各社大差ありません.従って『価格』『品質』ともに差を付けられないと考えた方が良いのです.

差が付くのは,従業員全員が知恵を絞ってつくり上げたSupply-Chainによって作り上げた,『Order-to-Delivery-Lead-Timeの短さ』が改革の第1目標になります.第1目標を達成した後,そのレベルを維持した上で,『Total-Lead-Timeの短縮』が改革の第2目標になります.

2-1-2 まずOrder-to-Delivery-Lead-Time短縮に取り組む

  1. 販売店頭で,実態調査
    同業他社と徹底比較し,自社の実力を知る事が第一歩です.その結果,いつまでにどの程度まで改善すべきかの目標が設定出来ます.
  2. 自社のOrder-to-Delivery-Lead-Timeは,どのような業務展開の結果なのか
    今の業務のやり方を,業務分掌や担当者から聞き出し,まず『ValueStreamMap(モノと情報の流れ図)』を作成します.
  3. 『モノと情報の流れ図』を基に現場の実態を『立ちんぼ調査*』する
    註;トヨタ生産方式の導入教育の中に『立ちんぼ』と言われる調査があります.ある製品に着目し,材料搬入から加工され他の部品と組付けられ,完成品になり倉庫に入り客先に発送されるまでを,じっと監視し続け,その実態を調査するのです.トラックで運ぶときは運転席に便乗させてもらうし,荷役作業も観察し続ける…これによってLead-Timeという概念を新人は叩き込まれます.具体的には,1個の部品に着目することで,
     生産;@生産頻度(工程待ち)A生産ロットサイズ(ロット待ち)
     運搬;@通い箱の収容数,B運搬頻度
     事務;@書類箱の上から処理(先入れ後出し)A即刻処理
    等々,業務の進め方でLead-Timeは大きく変動する事を体感できるのです.
  4. 実態調査した結果,多くの会社では,作業の順番を事務員任せにするところが多く,これが一番Lead-Timeを長くしていたと言う例もあります.
  5. 生産量の多い製品から取り組み,『モノと情報の流れ図』を検討し
    • 生産の頻度を増やし,運搬との整合性をとり在庫を減らす
    • 工程の流れに沿って通い箱の収容数の整合性をとり滞留を無くす
    等,全体を見ながら滞留を無くす(Lead-Time短縮)理詰めで解決案を練ることが大事です.

2-1-3 次にTotal-Lead-Time短縮に取り組む

改革されたOrder-to-Delivery-Lead-Timeを維持しながら,Total Lead-Time,即ち原材料仕入れから完成品在庫から納品までのLead-Time短縮,言い換えれば『棚卸資産の圧縮に改革』の矛先を変え,BSをよくしていきます.これによって,最終的な企業の収益性評価ROAを向上させていきます.

2-1-4 会社業務を時間軸で点検する事で指導者成を!

通常は自社の縦割り組織の業務の展開状況は,費用(金銭)と言う尺度で常に点検し修正していました.

Order-to-Delivery-Lead-TimeやTotalLead-Timeの短縮活動は,言い換えれば直接測定出来,人為操作の効かない時間という単位で自社の業務を点検・測定していくことになります.言い換えれば,『会社の縦割り組織に,時間軸という横串を入れ案件ごとの業務処理時間を測定し,内部に潜む経営課題をあぶり出し,俊敏に対応する組織に作り変える』ということです.これには以下のような大きな二つの目論みがあります.

当ホームページの『季節の御挨拶…2016年4月』に書いたようにOrder-to-Delivery-Lead-Time短縮を狙った業務の進め方は中国料理で発達し現在では世界中,どの分野でも展開されています.

  1. 『飲茶方式』完成品在庫を即引き当て,売れた分を後補充生産
    \begin{equation} \text{Order-to-Delivery-Lead-Time} \fallingdotseq ゼロ + 物流時間 \end{equation}
  2. 『一般受注料理方式』部品,半完成品在庫を持ち,即生産し(中国料理では数分以内)客に引き渡す.使った分は即後補充手配
    \begin{equation} \text{Order-to-Delivery-Lead-Time} = 数日以内 + 物流時間 \end{equation}
  3. 『特別注文料理方式』受注してから材料等を発注,到着を待って生産して引き当て
    \begin{equation} \text{Order-to-Delivery-Lead-Time} = 数ヶ月以内 + 物流時間 \end{equation}

このような3種類の業務形態が並行する中で,受注から納品,代金回収までの実務は,『営業部門』『生産・輸送部門』『品質保証部門』『製造部門』『調達部門』と言った機能別に縦割組織を通じて行われていますので,業務の進行を時間測定し,列車の運行ダイヤのように,時間と空間を一枚の図表で表現しないと,実態がつかみきれない事にあります.

この活動では,縦軸に工程(含一時置場)をとり,横軸に時刻をとって描いた図を『生産ダイヤグラム』と言いますが,これを描くことで,工場全体で,時々刻々何処で何をしているのか… 全社でみれば,今,A案件は甲部門で,B案件とC案件は乙部門で処理中である事が,管理者がネットで確認できるようになるのです.このような管理することが今もてはやされているDXの一つの局面であると考えています.これが第1の目論みです.

現在日本の会社では,大学出ただけの全くの素人を受け入れ部門単位で社内で育成し(最近の社内教育はかなり怪しいですが・・・)成績のよいものが役員になり,やがて代表取締役になり会社を運営することになります.

しかし見方を変えれば,会社役員も社長も一つの部門で育った悪く言えば専門バカで,大会社のさまざまな業務に精通しているとはとても言えない状況です.更に言えば,創業後しばらくの時間をたった会社では,社内の業務全般にわたって管理のできるレベルに精通し,Topを補佐できる人材は皆無ではないか?と危惧しています.

そのため,役員会は『群盲象を撫ぜる』状態になり,大きな決断がでず,30年間業務改革できずに,世界から周回遅れになっているのだと推測しています.

今回紹介した『会社業務を時間軸で点検するプロジェクト』に,将来の幹部候補生を参画させることで,自社の全容が把握出来,これ以上ないOJTになると思います.これが第2の目論みです.

[3] パーキンソンの法則の本質を悟る

私事ですが,四半世紀前,2世帯住宅を建て息子夫婦と住んでいますが,門扉から玄関までの通路の一辺4m足らず,面積にして約14uの庭を造ることが出来ました.角地だったので,庭師の薦めで道路に接する面はL字型に山茶花の生け垣にしましたが,当初,幹の太さは親指程度,透け透けで早く大きく育てと願って居ました.

庭の中央には孫が小さい時は1.5m角の砂場を作り,その跡が花壇となりました.昨年,コロナで家に籠もり,関心が庭に向き,花壇の手入れを始めてみますと昔と比べ庭が狭く感じ,巻尺で調べると,庭師は上面と道路面のみ刈り込みをしたいたため,生け垣が内側に伸びてきて,当初20cm程度だった厚みが,今では80cmを超えるまでになってしまっていたのです.庭の内側の空き寸法は4m弱から3m余になり,面積は約14uから9uに減ってしまっていたのでした.

この事実から,有名な『パーキンソンの法則』を思い出し,その意味するところを悟りました.外側と上側の制限を受けた生け垣は,制限のない内側に勢力を伸ばして来たのでした.

写真-1 庭の生け垣の本体

思い切って庭の内側から,生け垣の枝を切り落としていくと,写真-1のように,幹は人間の足首より太く逞しく育ち,上の方の枝は過密状態に重なり合い,弱い枝は,窒息状態で枯れていました.垣根の隠蔽性を確保出来るギリギリまで枝葉を取り除いたのがこの写真です.

生け垣でさえ,内側の枝振りを整理せずにいると,窒息して枯れるほど過密に枝葉が入り組み,生け垣そのものが大変なことになるだけでなく,中庭への日当たりを悪くし,風通しも悪くし,貴重な庭の面積さえも奪ってしまっている…状態になってしまっていたのです.

生け垣でさえこのように放置すれば悪影響を及ぼす…ということは生身の人間組織では,上司・部下,先輩・後輩というFactorが加わり,放置すれば『伏魔殿』になっていくのでは…危惧しながら庭作業を進めていました.同時に,パーキンソンの法則の意味を悟った気になりました.

生け垣の改造計画は,生け垣の内側から枝を払い,横方向には生かす枝と剪定する枝を峻別し,日当たりと風通しを良くしながら,生け垣の厚みを半減させる.出来た空間に棚を作り,そこに様々な植木鉢を並べ,庭を楽しむ…と言うものです.言わば,庭の立体活用です.第1期工事が写真-2になります.

写真-2 生け垣の内側の枝を払い,植木鉢棚を設置立体活用

【まとめ】

第2章で2023年に取り組むべきテーマは,地産地消に向けたSCMの再構築ですが,『会社の縦割り組織に,時間軸という横串を入れ案件ごとの業務処理時間を測定し,内部に潜む経営課題をあぶり出し,俊敏に対応する組織に作り変える事を提案しました.

提案のように今までになかったやり方と視点で業務を見直すと,拙宅の庭で私が経験した以上の,今まで気がつかなかった課題や,問題点が貴社の中で発見され,今までになかった解決の発想が生まれ,それが引き金となって,貴社の本格的DXの第一歩が踏み出されることを期待しています.

そして読者の皆さまにとっても,今年が飛躍の第一歩であることを祈念致します.


2023年1月吉日
(株)Jコスト研究所 代表 田中正知



2022年10月

季節のご挨拶

〜 仮説;クリミア橋爆破はプーチンの『苦肉の計』 〜

読者の皆様に謹んで10月のご挨拶を申し上げます.

しばらくお休みを頂いていましたが,先回(5月)この欄で以下の四項目が,年末までに日本を襲うことが予想されるので改革を急がねばならない…と書きました.

  • 【A】コロナ禍による生活環境の変容(売れ筋が変わる)
  • 【B】急激な経済回復に伴うインフレ懸念と,それに伴う金利上昇,円安
  • 【C】ウクライナ侵攻による食料とエネルギー危機
  • 【D】中国のゼロコロナ政策で,地球規模のSupply Chain毀損,中国の景気後退で不動産バブル崩壊⇒地球規模の大不況

5ヶ月経った今日,上記の四項目は,恐れていた最悪の方向に推移しています.中国は5年に一度の共産党大会を前にして緊張状態にありますが,経済はかなり悪化している様子で,不動産バブル崩壊は現実味を増してきたといいます.

この辺の話は次回に回すとして,今日皆さまにご呈示するお話しは,表題のように,皆さまと同じマスコミ報道を手にしながら,幾ばくかの工学的知見と,トヨタ生産方式のツールとして有名な『何故なぜ分析』を使って真因の探究をしていくと,マスコミ報道の主流のウクライナ犯行説とは真反対の仮説『〜 仮説;クリミア橋爆破はプーチンの苦肉の計〜』が導き出される事についてお話ししたいと思います.

ウクライナ侵攻を憂いている皆さまは勿論のこと,戦争に関心の無い方でも,この仮説を導き出したプロセスは,現場で起きた事象の真因の探求にも役立ちますので丁寧に文章にまとめました.

きっとお役に立つと思いますので 最後までお読みください.


[1] 報道機関の取り扱い

10月7日はプーチンの70歳の誕生日だったので,その一日遅れで『クリミア大橋の襲撃』という大変なプレゼント渡された…報道されて,それ以降,誰かは分からないけれど,反ロシア系の犯行という論調で推移しています.

10日からのロシアによるウクライナ全土に向けての,主に電力インフラを狙った大量のミサイル攻撃に対して『ロシアの反撃』というサブタイトルで報道されています.

一部のコメンテーターが,爆破の48時間後に一斉にミサイル攻撃をするのは準備が良すぎる.米軍でさえ手続きに72時間かかる…橋爆破とは関係なしに,事前に準備されたもと思われる…という説明もありました.

今日まで,橋を爆破されてプーチンは怒り心頭に達している…,次々と反撃を繰り出すであろう…という論調に収斂しつつあります.


[2] 三国志由来の『苦肉の計』とプーチンの前科

苦肉の計

兵法三十六計の第三十四計にあたる戦術.

人間というものは自分を傷つけることはない,と思い込む心理を利用して敵を騙す計略である.日本では苦肉の策(くにくのさく),苦肉の計(くにくのけい),苦肉の謀(くにくのはかりごと)ともいう.

(Wikipedia)

歴史を紐解けば三国志が起源とされますが,近代では
1937年;盧溝橋事件から日中戦争が始まり
1964年;トンキン湾事件で米軍の北ベトナム爆撃が始まりました.

ロシアでは,
1999年;エリツィン大統領が汚職事件で起訴されかけた時,当時の首相だったプーチンがKGBに命じ高層アパートを次々と5回爆破させ,
この甚大な被害をもたらしたのは,『チェチェンのテロによるものだ』として国論を統一し第二次チェチェン紛争起こし,チェチェンを支配下に置くと同時に,エリツィン大統領を苦境から救い出すことに成功したとされ,その功績で,プーチンが大統領になった…のが公然の秘密とされています.


以下の文章で,1999年の成功体験から,今回のクリミア大橋は,プーチンの苦肉計(自作自演)という仮説が導き出せます.


[3] クリミア大橋爆破に『何故なぜ分析』を試みる

以下, 報道から拾い集めた大括りの事実を【エビデンス】とし,個々の事象から導いた結論を<考察>として,工学的知見と,トヨタ生産方式の『何故なぜ分析』手法を使って紐解いていきます.

【エビデンス-1】

クリミア半島の空軍基地の爆発の時は,現場写真は遠方からの煙だけ写ったモノでした.ロシアは『事故だ』と言い張っていましたが,西側報道は,衛星写真から被害が解明し,ニュースにしていました.

一方,今回のクリミア大橋の件は素敵なアングルで動画が撮られ,ネットで即時公開されています.事前に計算したアングルで撮影準備し,撮影後の仕上がりを確認して配信…疑われるほど迫力ある映像が配信され,ロシア側が積極的に関与した,としか考えられません.

【エビデンス-2】

下の写真のように爆破されたのは道路橋だけでなく,となりの鉄道橋を走っていた貨物列車にも爆破の影響で引火し炎上すると言う被害に遭った…,と言う状況を映し出した写真として各局で放映されています.

それではこの写真を詳細に検討してみましょう.



<考察-1>

走っていたとされる貨物列車が映像では停車状態で炎上します.

一般に貨物列車は急停止が不得手で,日本の法律では制動距離は600m以下と規制されています.大型貨車でも1車両20m以下ですから,急ブレーキをかけたとしてもその瞬間から停止まで25両分くらいは移動してしまうはずで工学的に説明がつきません.

さらに,運転士の立場で考えると,走行中に後方で大音響がしても『何が起きたのか?』『 何をすべきか?』咄嗟の判断はできないはずです.

通常は,おかしいと思ったら緊急停止する事になっていると思いますが,列車の特性として,橋の上やトンネル内で停車すると二次災害が起きやすく,又,復旧工事が厄介なので,平地までは強引に走行した後停止して点検するのが普通です.

特に鉄橋は高熱に弱いので,燃えている貨車を動かし続けて,鉄橋を熱被害から守るマニュアルがあると思います.

従って,走行中に火災に遭ったときは,発火地点からかなり離れた場所に貨車は停止しているはずです.

<考察-2>

停止している理由として,走行中の貨物列車が,爆発に遭遇した結果,衝撃で脱線して急停止した事が考えられますが,この場合は,脱線した貨車の後続の貨車は追突状態になり,折り重なった状態に脱線します.鉄橋から落下もあり得ます.<福知山線事故参照>

ところが,写真では全部の貨車は整然と並んで停車しています.脱線した様子はありません.


結論として,走行中の貨物列車が爆破で脱線もせずその場で即停止するということはありえません.

この写真が実写であるとすれば,貨物列車を停めておいてそので道路橋を爆発させたことになり,ロシア当局が関与せずにできるはずがありません.

まさにプーチン得意の『苦肉の計』つまり,自慢にしていたクリミア橋をプーチン自らが壊すとは誰も考えないので,敢えてそれを実行し,ウクライナの犯行と思い込ませ国論を統一して攻め込む……仮説が成立するのです.

【エビデンス-3】

クリミア大橋爆破がロシア側の苦肉の計(自作自演)とすれば,写真から得られる疑問点がすべて合理的な説明かできます.

<考察-3>

燃えているタンク車の間に,3〜5両の燃えていない貨車があります.

『鉄橋に傷を残さず派手に燃えさかる貨車を演出せよ』と命じられたら,工学技術者は以下のような計画をすることでしょう.

派手な煙を出すが高温にならない油を仕掛けた燃やすタンク車と,その前後に冷却材(水等)を積んだ冷やすタンク車,消化剤を積んだ消すタンク車を巧に配置し,燃やしながらゆっくり移動させ,冷やすタンク車から水を噴霧して鉄橋を冷やし,消化剤で火勢をControlすれば,派手な炎の割には被害は最少で済みます.駐車場の鉄骨のように,鉄橋の内側に事前に耐熱材を吹き付けておけば,準備は完璧でしょう.

<考察-4>

更に燃えている貨車の風下には石炭用の貨車があります.風上側にはタンク車が並んでいます.最小限の被害で貨車の燃えている写真を撮ろうと思えば,長い貨物列車の中で此処しかない場所が燃えています.

<考察-5>

爆破写真撮影後の鉄道橋の復旧はどうだったのでしょうか?事件発生は10月8日午前6時7分とされていますが,『列車は予定通り,現地時間8日17時10分にクリミア半島のシンフェロポリを出発した.』と報道されています.

鉄道はたった10時間で平常運転に戻っている事になります.

鉄橋の弱点である高熱被害は皆無だった.脱線もなかった.後始末をし,安全確認した後,定常運行に戻った,と解釈できます.

【エビデンス-4】

道路橋はどうだったのか…

<考察-6>

走行する自動車の運転手にとっては,道路橋を延々10km余走り,いよいよクリミアと言うところで橋桁が落下した事になります.

欧米の橋げた落下事故のニュースでは,ブレーキが間に合わず自動車が川に墜落した映像がよく放映されています.

今回は 爆発したトラックについてのみ報道がありますが,後続車については不思議と何の報道もありません.爆発の瞬間の写真には,行く方向に2台,来る方向に2台映っている事から,走行中車両の平均車間距離100mと仮定すれば,事故の起きたクリミア行きは入口から15kmとして橋の上を走行していた車だけでおおよそ150台の車両が事故現場付近に渋滞するはずです.

事故後30分で道路橋の入口を封鎖しても,橋の上には数百台,数kmの渋滞車両が,事故現場近くに並ぶはずで,しっかりした中央分離帯があるので,Uターンもできず,絶好の報道のネタになるはずですが,不思議なことに,そのような映像もアナウンスもありませんでした.

当局が事故を仕込んだのであれば,事前に通行量を絞る事も可能で,納得できます.

<考察-7>

橋桁は容易に交換できます.

ご承知のように,橋は『橋桁』と『橋脚』からできています.

『橋桁』は消耗品で,自動車で言ったらタイヤのように,不具合の生じた橋桁は交換されます.

全長何kmもある橋でも,現地工事は『橋脚』だけで,『橋桁』は数種類で済むように最初から設計されていて,近くの陸上の工場で効率よく大量生産され,でき上がった『橋桁』は大きなクレーン船で『橋脚』の間に設置されていきます.これだけの大きな橋であれば,予備の『橋桁』は準備されていると思われます.

従って,当面,一車線通行で凌ぎ,ウクライナが酷いことをしたと国民に印象付けた後,数週間で新しい『橋桁』を取り付け完全復旧すると思います.

現に,ニュースに依れば,当日夜から, 一車線通行で再開したと報じられています.

【エビデンス-5】

爆破事件後のプーチンの行動

クリミアの空軍基地の件では,ロシア当局は事故と言い張り襲撃されたと白状するまで数週間かかりました.プーチンは何も言っていなかったと記憶しています.

<考察-8>

クリミア大橋の件は,道路橋の爆発の瞬間映像,燃えさかる貨物列車の映像を当局が事前準備しなければ撮れないような素晴らしいアングルで撮影し,大々的に全世界に公開しました.

『捜査結果をプーチンに報告するシーン』まで撮影し放送しています.その後『プーチン自ら,これはウクライナのテロであると明言し必ず報復するというまでのシーン』を撮影させ,全世界に発信しています.

通常の常識では,誰もがウクライナが狙っていると思われる大橋に,見事に攻撃されたら,国家治安体制の大恥で,まず責任者の処分が話題になり,被害状況を世間に大々的に報道するものではありません.

プーチンの『苦肉の計』であれば納得できます.

<考察-9>

下記写真のように破壊された橋と燃え盛る貨物列車を背景にしてプーチン自ら壇上に立ち『ウクライナのテロに対して断固として闘う!』と言う大演説が配信されました.



そして皮肉なことに,プーチンの演説の背景の画面こそ,プーチンが欲しがった映像と思いますが,実写であるとすれば,工学的に見て停止している貨物列車ので道路橋を爆破させたという,ロシア当局の関与の証拠写真そのものなのです.

プーチンは,自分が命じて撮影させた映像の前に立って,ウクライナへの反撃の檄を飛ばしているのです.もしこの写真のタイトルを付けるとすれば『プーチンの苦肉の計』が相応しいと言わざるを得ません.

<考察-10>

事件発生から48時間以内でウクライナ全土に無差別攻撃を開始!

この攻撃の真の目的は,専門家によると,全土の電力施設を狙い撃ちし,冬に向かってウクライナ国民を凍えさせると同時に,ウクライナからNATO諸国へ電力輸出を止めさせ,ガスだけでは不足しているエネルギー供給制限の仕上げをしようというものだとされています.

クリミア橋の爆破劇は,この攻撃を報復と名付け,正当化を計る為でもあったのです.


[4] 『何故なぜ分析』のまとめ

ウクライナ戦争の話から 現場改善の話に移りましょう.

『何故なぜ分析』は思考実験の一種で,現地現物を細かく観察し,その原因は何であるか仮説を立てます.その仮説で説明できない事象が一つでもあれば,その仮説は正しくないのです.『何故なぜ分析』を途中でやめてしまうと,とんでもない結論に達してしまいます.

『本流トヨタ方式』では,『神は細部に宿る』という言葉でこれを戒めています.心構えだけではダメで,日常のトレーニングが大切になります.

ニュースを聞くときも,起きた現象とその原因を報道されますが,起きた現象はそのまま鵜呑みにするしかありませんが,原因はぜひご自分の頭で考えるトレーニングをしてください.

以前に「『大学』と『大学校』の違いはなにか?」という話をしました.『大学校』というのはある教材を効率よくマスターさせるための学校である,『大学』は無から有を生み出す研究機関で,五里霧中の中から正しい答えを導き出す方法論を学ぶところであると,その中身をマスターした方は理解していただいていると思います.

誰もが起きている事象の原因は自分の頭で考えることが民主主義国家では求められていますが,特に国家の税金を使って,大学で学位を取得した人たちは,矜持として,起きている現象は鵜呑みにせざるを得ませんが,その原因の推測は自らの頭で考え出さねばならないのです.そしてその考えを社会に広め,互いにディスカッションすることで一歩一歩社会を向上させていくことになるのです.

コロナ禍で顕在化してきた1990年代からの日本の衰退はこの矜持が衰えてきたことにあると警鐘を鳴らしてきましたが,クリミア大橋事件の報道が,プーチンの苦肉の計にハマっている事を見ますと世界中にその傾向があり,民主国家の基盤が緩んでいることを気付かされた次第です.


次回は,1ドル150円時代に,製造業は何をすべきかを考えてみたいと思います.


2022年10月吉日
(株)Jコスト研究所 代表 田中正知